2014 Fiscal Year Annual Research Report
光分解性PEG脂質表面上での、一細胞アレイ解析とハイスループット細胞選択法の開発
Project/Area Number |
14J10672
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山平 真也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞アレイ / PEG脂質 / 光分解性化合物 / 細胞回収技術 / マイクロ流路 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の細胞を解析し、その中から必要な細胞を選択・回収する技術は、多くの分野において重要な技術である。そこで本研究では、光分解性の細胞固定化剤を用いて一細胞ずつ並べた一細胞アレイを作製し、細胞形態や細胞内分子動態なども含めた多角的な解析を行い、目的に適う細胞のみを光照射と送液によって迅速簡便に回収することが可能な細胞チップの開発を目的とした。 まず、細胞固定化剤として、これまでの研究で開発した光分解性PEG脂質を用いたところ、一細胞アレイの構築のみ、もしくは細胞光遊離のみが可能な表面を作製することができた。しかし、光分解性PEG脂質を修飾する材料や修飾条件の検討を行ったが、一細胞アレイの構築と細胞光遊離の両方を同時に達成することができなかった。そこで、新規光分解性細胞固定化剤として、細胞吸着阻害性を有する2-Methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC)、安定したコート表面を構築可能なButyl methacrylate (BMA)、そしてメタクリル化光分解性PEG脂質をモノマーとして含有したコポリマーを開発した。このコポリマーをコートした表面を用いたところ、一細胞アレイからの一細胞単位の細胞光遊離に成功した。細胞遊離のスループットを計算したところ一細胞あたり5秒であり、既存のキャピラリーによる細胞回収法の一細胞あたり30秒以上を大きく上回った。以上の結果から、光分解性PEG脂質コポリマー表面を用いることによって、ハイスループットに一細胞アレイから目的細胞を一細胞単位で遊離回収できることが示唆された。 また、上記の細胞回収研究と同時に、本一細胞アレイを用いた細胞解析系の構築を行った。画像解析ソフトのImageJで作動する細胞画像解析プログラムを作製し、一細胞アレイに適用したところ、これまで解析が困難であった一細胞単位の運動性や形態変化といった複雑な現象を、迅速かつ定量的に画像解析することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新規の光分解性細胞固定化剤を開発し、ハイスループットな一細胞アレイからの一細胞単位の細胞光遊離に成功した。また、一細胞アレイの光パターニングに改良を加えることにより、非常に多くの細胞の解析・回収が可能となるよう、1 平方cmあたり50万細胞の超高密度一細胞アレイの構築に成功した。さらに、一細胞アレイ上の細胞の複雑な動態を、顕微鏡画像から詳細かつ迅速に定量解析することにも成功した。このように、今年度の当初の目標をほぼ達成することができた。次に細胞回収デバイスの構築を試みたところ、マイクロ流路内の圧力損失により発生した気泡によって、光に依存しない細胞の脱離が起きてしまった。 上記のように、流路デバイスの開発においては問題が生じているが、その他の課題についてはおおむね計画通りに研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に、一細胞アレイを作製し、さらに一細胞単位で細胞を光遊離可能なスマートマテリアルとして、細胞吸着阻害性を有する2-Methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC)、安定したコート表面を構築可能なButyl methacrylate (BMA)、そしてメタクリル化光分解性PEG脂質をモノマーとして含有したコポリマーを開発した。そこで27年度はまず、これらのモノマーの組成比や、基板のコート方法等について、詳細な検討を行い、光照射した細胞がより遊離しやすく、光照射していない細胞がより脱離しにくい基板表面の構築を行う。また、現行の光分解性細胞固定化剤を光分解するには、比較的多くの光照射量が必要であり、細胞遊離効率の歩留まりや細胞障害への懸念が課題である。従って、より迅速かつ細胞適合性の高い細胞回収のために、光分解性基の改良を行う。 次に、この表面を用いることにより、有用細胞が取得可能であることを、モデル実験より実証する。近年、新たなガン診断方法として、血液中を循環するがん細胞(CTC)の検出が注目されている。末梢血に存在するCTCの個数から、ガンの転移の可能性や治療効果の検証が可能となる。さらにCTCを選別し、遺伝子変異や薬剤に対する応答などを詳細に解析することにより、適切な治療方法を探索することが可能となると考えられている。そこで本研究では、GFP発現高転移性ヒトがん細胞を担癌したマウスをモデルとして用い、本技術により末梢血からのCTCの検出・回収を行う。ガン細胞を標識したGFP蛍光、細胞形態、蛍光標識抗体を用いた細胞表面マーカーCD44の発現レベルといった多角的なパラメーターを、一細胞アレイを用いて迅速かつ定量的に解析し、ガン細胞を特定する。さらにガン細胞を光遊離・回収し、本実験系における細胞回収の精度や収率を算出する。
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Research Products
(4 results)