2015 Fiscal Year Annual Research Report
光電子分光および時間分解電子線回折による鉄系超伝導体の研究
Project/Area Number |
14J10674
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
園部 竜也 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 鉄系超伝導体 / 光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄系超伝導体における超伝導発現に軌道自由度の果たす役割を明らかにするため, BaFe2(As,P)2, Na(Fe,Co)As, Fe(Se,S)の3つの鉄系超伝導体系について広範囲の組成・温度領域にわたる系統的な角度分解光電子分光測定を行い, 各系において軌道異方性の見られる領域を決定した。 BaFe2(As,P)2における軌道異方性は, 斜方晶・反強磁性相および超伝導相を覆う範囲に広がっている一方で, Na(Fe,Co)AsおよびFeSeにおいて軌道異方性は構造相転移とほぼ同温において生じ, 構造相転移の消失する組成において軌道異方性も消失することが明らかになった。スピン・格子自由度の振る舞いとの比較から, 構造相転移に伴うスピン揺らぎの増大が軌道秩序に由来するものである可能性など複数の系にわたる共通点が見られた。また, Fe(Se,S)のように構造相転移が軌道秩序に由来する可能性のある系の存在を指摘した。 観測された軌道異方性と超伝導との間には直接的な関係は見られなかった。構造相転移以上以上における軌道異方性が軌道揺らぎを観測しているとすると, BaFe2(As,P)2においては軌道揺らぎがスピン揺らぎと協調的に発達し, 超伝導形成に有利に寄与している可能性が考えられることを示唆した。 上記のように, 本研究において系統的に観測した軌道異方性と擬ギャップの温度・組成依存性は, 物質系に応じて多様な振る舞いを示す一方で, いくつかの共通点を見出すこともできる。これらの知見は, 多自由度の競合する鉄系超伝導体における常伝導状態およびそこから発現する超伝導状態を理解する上で, 重要な指針を与えるものである。
|
Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Research Products
(1 results)
-
[Journal Article] Momentum-dependent sign inversion of orbital order in superconducting FeSe2015
Author(s)
Y. Suzuki, T. Shimojima, T. Sonobe, A. Nakamura, M. Sakano, H. Tsuji, J. Omachi, K. Yoshioka, M. Kuwata-Gonokami, T. Watashige, R. Kobayashi, S. Kasahara, T. Shibauchi, Y. Matsuda, Y. Yamakawa, H. Kontani, and K. Ishizaka
-
Journal Title
PHYSICAL REVIEW B
Volume: 92
Pages: 205117-1-6
DOI
Peer Reviewed