2014 Fiscal Year Annual Research Report
ゴシック建築における壁の厚みと壁内通路に関する様式論的研究
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14J10678
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋崎 礼 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ゴシック建築 / ロマネスク建築 / 壁内通路 / 組積造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゴシック建築をその構築という観点から様式的に捉えなおすことを目的としている。初年度に当たる本年度は、研究の主軸であるゴシック建築の壁内通路(壁の厚みの中の通路)の具体的な調査に加えて、研究の射程範囲をより明確にするため、対象を中世に限定せず建築技法に関する基礎的情報を幅広く収集した。具体的には以下の作業を行った。 1.古代ローマのコンクリート構法に関する文献を参照し、粗石で内部を充填する中世の石造建築との比較を行うことで両者の様式的連続性について示唆を得ることができた。 2.ゴシック建築の壁内通路に関して網羅的整理を行い、その成果を日本建築学会計画系論文集に投稿した。具体的には、壁内通路の構築において特に重要な役割を果たしたと思われる通路の天井部(ヴォールトあるいは平天井)の形状及びその構造的特徴に基づいて壁内通路を分類した。さらに、年表と地図にまとめることを通して、地理的・時間的な傾向とそれが持つ様式的な意義に関して考察を行った。 3.イタリア及びドイツのロマネスク建築における壁面のアーチとそれに関係するドワーフギャラリー(軒下の壁内通路)の構造について、文献及び図面・写真資料から調査した。 4.本研究は最終的に様式論の展開を目指しているため、近代においてゴシック建築がひとつの様式として認識されるに至った過程、及び様式概念そのものの出自とその問題点、さらに様式としてのゴシック建築の解釈について整理を行った。 以上の作業により、次年度さらに掘り下げる領域を確定するとともに、実地調査の対象を絞り込むことができた。年度末には、フランスの研究者の協力を得て実際に壁内通路への立入調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的に様式論をまとめるため必要となる構築技術の通史的把握に関してはまだカバーしきれていない部分も多いが、研究の主軸であるゴシック建築の壁内通路については投稿論文として整理もされており、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のように、今年度の研究により、研究の主軸であるフランスの壁内通路に関してはおおむね類型整理を完了した。 次年度は壁内通路への立入調査を複数回にわたって行い、以上の成果を実地において確認するとともに、個々の事例の観察を通じて文献や図面では捉えきれなかったミクロな構法について整理・考察する。同時に、フランス以外の地域に分布する代表的な壁内通路であるドワーフギャラリーに関して、類型整理と文献調査を試みる。
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Research Products
(1 results)