2015 Fiscal Year Annual Research Report
近接したアルキン部位をもつ非平面環状 π電子系の機能開拓
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14J10724
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| Research Institution | Nagoya University |
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Principal Investigator |
大島 寛也 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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| Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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| Keywords | π共役 / ヘプタレン / デヒドロアヌレン / 渡環環化 / 芳香族性 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
近接したアルキン部位をもつ分子の機能開拓を目的として，これまでにチオフェン縮環ビスデヒドロ[12]アヌレン1の反応性を検討し，還元条件でテトラチエノ縮環ヘプタレン2が構築できることを見出している．加えて，2のさらなる還元により二電子還元体が得られ，理論，実験両面からヘプタレン中性種が非芳香族，ジアニオンが芳香族であることを明らかにしてきた．今回，ヘプタレン骨格の電子構造に対して縮環部位の環のサイズや電子構造がどのような影響を与えるのかを検証すべく，テトラベンゾヘプタレン3を設計，合成した．テトラベンゾヘプタレン3は，ジフェニルアセチレンのジブロモ体を出発原料に，酸化的ホモカップリングによりベンゼン縮環ビスデヒドロ[12]アヌレン4を得た後，還元的渡環環化により収率45%で得た．X線結晶構造解析の結果，3は，2と比較して大きく捻れた構造をもつことがわかった．続いて，縮環部位の違いがヘプタレンジアニオンの芳香族性に与える影響を検証すべく，3の化学還元を試みた．THF中室温で，3に金属カリウムを作用させたところ，溶液の色が無色から茶色へと変化した．1H NMRスペクトルを測定したところ，ヘプタレン骨格のオレフィン水素の化学シフトが，還元に伴い大幅に高磁場シフトしていた．これは，2が還元に伴い低磁場シフトしたこととは対照的な結果である．この大きな違いには環電流効果が関与していると考えられるため，理論計算により，中性種およびジアニオンの構造最適化とNICS 値を見積もった．その結果，2および3の中性種ではいずれも非芳香族であった．ジアニオンは，2が芳香族であった一方，3では反芳香族性の発現が示唆された．この計算結果は，芳香環縮環部位がヘプタレンジアニオンの電子構造に大きく寄与することおを示している．
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縮合多環π電子系の簡便な合成法の確立と芳香環縮環部位の種類が電子構造に与える影響を明らかにするべく，昨年度はこれまでのチオフェン縮環体とは異なるベンゼン縮環ビスデヒロ[12]アヌレンを設計，合成し，その反応性を検討した．さらに，そこから得られるヘプタレンという骨格に着目し，芳香環縮環部位とヘプタレンの電子構造の相関を徹底的に調べ上げた．具体的には，テトラベンゾヘプタレンを設計，合成しただけでなく，その還元種の同定まで至った．さらに，理論計算を用いて，電子構造を明らかにした．チオフェン縮環ヘプタレンの中性種が非芳香族性を，二電子還元体が芳香族性を示した一方，ベンゼン縮環体は中性種で非芳香族性を，二電子還元体で反芳香族性を示した．この結果は，非交互炭化水素の化学に対して新たな知見を与えるものであり，順調に成果が得られていると評価できる．
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| Strategy for Future Research Activity |
近接したアルキン部位をもつ環状分子の一連の反応により，様々な縮合多環π電子系分子を得るに至っているが，今後はこの中でも，縮合多環ペンタレンの凝集状態の制御に取り組む．具体的には，ジチエノベンゼン縮環ペンタレンの末端に非対称にかさ高い置換基を導入し，二分子の凝集を誘起，制御する．高い反芳香族性をもつペンタレンをface-to-faceで凝集させることができれば，単分子とは異なる芳香族性を発現するだけでなく，反芳香族分子のJ会合やH会合により特異な物性の発現が期待できる．さらにこれらの知見を踏まえ，凝集状態の構造特性と半導体特性の相関についても検討したい．
また，昨年度に得られたテトラベンゾヘプタレンの還元種の電子構造および分子構造を実験的に追究し，チオフェン縮環体との相違を明らかにする．具体的には，X線結晶構造解析に適した単結晶を得るため，還元種を生成する際の還元剤の種類，再結晶条件を検討する．
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