2015 Fiscal Year Annual Research Report
リポソームDDS製剤と血栓溶解剤併用療法による虚血性脳血管障害の新規治療法構築
Project/Area Number |
14J10730
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
福田 達也 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | リポソーム / 脳梗塞 / 脳虚血/再灌流障害 / DDS / 組織プラスミノーゲン活性化因子 / PITモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は、栓子法による脳梗塞モデルラットにおいて、脳虚血時に生じる血管透過性の亢進に伴い、ナノサイズのリポソームが虚血部位へ到達可能であること、また脳保護剤封入リポソームの血流再開前投与が脳虚血/再灌流障害治療に有効であることを示した。本研究では、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)製剤により血流を再開でき、より臨床を反映した脳虚血モデルであるPhotochemically induced thronbosis(PIT)モデルを導入し、t-PAとリポソームDDS製剤による脳梗塞治療法の有用性を明らかにすることを目的としている。本年度は、リポソーム製剤として塩酸ファスジル内封リポソーム(Fasudil-Lip)を用い、t-PAとの併用療法の有用性について検討した。まず、PITモデルにおけるt-PAの治療可能時間(TTW)を虚血24時間後における脳細胞傷害を指標に評価した。顕著な脳保護効果は虚血2時間後までのt-PA投与で認められたことから、本モデルでのTTWは2時間後程度であることが示唆された。次に、Fasudil-Lip、t-PAの投与時間をそれぞれ虚血1、3時間後に設定し、併用療法による治療効果を検討したところ、虚血24時間後において、各単独投与群と比較して有意に高い脳細胞傷害抑制効果、および運動機能改善効果が認められた。また本併用療法は、t-PA処置により誘発された脳血管透過性の亢進や、脳出血への関与が報告されているマトリックスメタロプロテアーゼ-2, 9の活性化を抑制した。これらの結果から、Fasudil-Lip/t-PA併用療法により、臨床において問題とされているt-PAの短いTTWの延長や、脳出血の危険性の軽減が実現できることが示唆された。本年度の研究成果から、リポソームDDS製剤と血栓溶解療法の併用が脳梗塞治療に有用であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では臨床を反映した脳虚血モデルにおいてリポソームDDSの有用性を明らかとすることで、リポソームDDS製剤の臨床応用への基盤構築を目指している。本年度の研究で、リポソームDDS製剤と血栓溶解剤t-PAの併用により高い治療効果が得られたことから、血流再開前からのリポソームを用いた脳梗塞治療が有効であることが考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は上記の研究成果に加え、脳梗塞の増悪化に関与する血小板由来成長因子受容体(PDGFRα)への標的化リガンドの開発、リポソームからの塩酸ファスジルの放出速度の制御に関する検討も併せて実施した。今後はリガンド修飾による脳梗塞部位標的化リポソームの開発や、脳梗塞治療に適したリポソーム製剤の開発に着手しリポソームの高機能化を図ることで、リポソームDDSによる脳梗塞治療の有用性を実証していきたいと考えている。
|