2014 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞におけるDNAメチル化と脱メチル化の細胞周期依存的連続変換現象の機構解明
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14J10904
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
首浦 武作志 鳥取大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / ES細胞 / DNAメチル化 / ヒストン修飾 / 始原生殖細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、DNAシトシンのメチル化(5mC)から5ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)への連続変換現象におけるDNAメチル化酵素(Dnmts)の役割を解明すること、PGC分化過程におけるリプログラミング時のクロマチン変化と、5hmC変換との相互関係を明らかにすることを目指している。研究計画で設定した3つの研究目的に則して、現在の研究実施状況を報告する。 目的① どのDnmt酵素がES細胞における5hmC変換の対象となるゲノムワイドなメチル化を行っているか再検討する。新規付加型Dnmt3a/3bを欠損したES細胞(DKO)と維持型Dnmt1を欠損したES細胞(Dnmt1 KO)を用いて、染色体上の5hmC局在性変化を解析した。DKO ES細胞では、5hmC変換領域がほぼ存在しない状態であった。よって、マウスES細胞における5hmC変換の対象となるメチル化は、多くはDnmt3a/3bが行っていると考えられる。しかし、Dnmt1欠損ES細胞でも5hmC変換領域の変化が見られたことから、Dnmt1も5hmC変換の対象となる領域のメチル化に関与していることが示唆された。 目的② ES細胞における、5hmC変換を介した脱メチル化後の再メチル化が、細胞周期のどの時点で起きるのか明らかにする。Dnmt1 KO ES細胞での染色体上の5hmC局在性を解析すると、特異的に姉妹染色分体の片側のみが5hmC陽性の細胞が50%存在した。このことから、DNA複製(S期)後におけるDnmt3a/3bの働きがDnmt1の欠損によって阻害されている可能性を見出した。 目的③ ES細胞のPGC分化誘導系を用い動原体近傍の5hmC化を引き起こすクロマチン変化を明らかにする。ES細胞からPGC分化誘導する場合は、一旦エピブラストを経由し分化誘導を行う必要がある。まず、ES細胞からエピブラスト様細胞(EpiLC)への分化誘導法の確立を行った。WT ES細胞では、エピブラストマーカー遺伝子Fgf5の発現が上昇していた。一方、Dnmt欠損ES細胞ではPGC様の遺伝子発現プロファイルを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、マウス初期胚や始原生殖細胞(PGC)で起こる、エピジェネティックリプログラミング機構を解明を目的としている。この機構解明のためリプログラミング活性をもつマウスES細胞を用いDNAメチル化(5mC)修飾の書き換えに関与する2種類の酵素群(1)DNAメチル化転移酵素Dnmts(Dnmt1/3a/3b)と(2)5mCを酸化し5ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)に変換する酵素(Tet1/2/3)の活性制御に関する特性を解析している。平成26年度は、Dnmt酵素毎の機能を解析するため、Dnmts欠損ES細胞での5hmC変換領域の変化を解析した。結果、未分化のES細胞ではTet酵素はDnmt3a/3bによるメチル化領域を選択的に5hmC変換することが明らかになった。加えて、変換の対象となるDnmt3a/3bによるメチル化が、Dnmt1の欠損によって阻害される可能性も見出した。また、ES細胞を始原生殖細胞(PGC)に分化誘導すると、主にDnmt1によって維持されていた5mCがTet酵素のターゲットとなりDNA修飾のリプログラミングが進行することが明らかになった。当初の年度目標は達成し、加えて新たな知見への糸口を見出すことも出来た。本年度の研究成果を国際学会1件、国内学会・研究会3件行った。また、学会では、専門分野および共同研究者との情報交換や議論を行うことも出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画で設定した3つの研究目的に則して、今後の研究の推進方策を述べる。 (目的1)Dnmt1、3a、3bのいずれの酵素が主にES細胞における5hmC変換の対象となるゲノムワイドなメチル化を行っているか再検討する。5hmC変換の対象となるメチル化は主にDNmt3a/3bに行われていることが示された。しかし、Dnmt1も5hmC変換の対象となる領域のメチル化に関与していることも示唆された。今後は、Dnmt1が再メチル化に直接的に関与しているのか、Dnmt3a/3bによる再メチル化に間接的に関与しているのか、その役割について詳しく解明していく予定である。 (目的2) ES細胞における、5hmC変換を介した脱メチル化後の再メチル化が、細胞周期のどの時点で起きるのか明らかにする。Dnmt1 KO ES細胞での染色体上の5hmC局在性を解析すると、特異的に姉妹染色分体の片側のみが5hmC陽性の細胞が50%存在した。このことから、DNA複製(S期)後におけるDnmt3a/3bの働きがDnmt1の欠損によって阻害されている可能性を見出した。そこで、Dnmt3a/3bによって細胞周期のいつ5mCが付加されているかを特定するため、細胞周期を認識し分取する方法の確立されている、FACSによる方法を用い細胞を分取しDNA中に含まれる5mC、5hmCの定量解析を行う。 (目的3)ES細胞のPGC分化誘導系を用い動原体近傍の5hmC化を引き起こすクロマチン変化を明らかにする。PGC分化に伴ってヘテロクロマチン領域を含む多くの領域で5mCから5hmCへの変換が亢進していた。今後、Dnmts欠損ES細胞においてクロマチン変化と5hmC変換の関連性について詳細に解明する。
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