2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会的ジレンマ状況における協力発生メカニズムのマルチメソッドアプローチによる解明
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14J10962
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉良 洋輔 東京工業大学, 社会理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 社会的ジレンマ / コモンズ / 輪番制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果は、第一に、N人囚人のジレンマ・モデルにおけるStrong Perfect Equilibrium(SPE)の導出である。SPEは、全ての結託参加プレイヤーの将来利得を改善できる場合に限り、同時に戦略を変更することが可能であると仮定した均衡概念である。昨年度検討していたStrongly Renegotiation-proof Equilibrium(SRE)と比べ、部分集合プレイヤーも考慮している点から、より強い均衡概念である。ここでは、多目的最適化の手法を用いて、協力が維持される均衡が存在する十分条件を導出した。 第二の成果は、明治・大正・昭和初期における共有林野政策が森林利用のパフォーマンス(森林被覆率・米の生産・森林火災・盗伐件数)に与えた影響の統計分析である。ここでは現在、当時の都道府県水準統計を用いて横断的時系列データを作成した。このデータを用いて、森林所有形態を独立変数とする固定効果モデル分析を行った結果、国有の所有形態となる森林面積の増加は、森林被覆率・森林火災には正の効果、コメの生産性には負の効果があることが分かった。この結果はIASC(国際コモンズ学会)で口頭報告を行い。コメントを得た。 第三の成果は、Missing Hero Dilemma(MHD)モデルにおける輪番協力均衡の分析である。MHDは、公共財の提供が一人しか行うことができず、それ以上協力者が増えても公共財の供給水準が上昇しないモデルである。ここでは、社会的ジレンマにおける貢献者が交代で出現する状況を分析するため、繰り返しのあるMHDについて、輪番制による協力均衡が維持されるための条件を分析した。その結果、集団の成員が順番に協力を行う「輪番制」を伴う戦略プロファイルが均衡となることを明らかにした。この成果はすでに数理社会学会で報告し、また国際会議での報告が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行ったプロジェクトのうち、N人囚人のジレンマの分析とMissing Hero Dilemmaの分析については、論文執筆が可能な段階になり、来年度内の論文投稿が望めると判断した。また他のプロジェクトについても、引き続きデータを追加するなどすれば、成果の公表が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、これまで行った研究の論文とりまとめに注力する。
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Research Products
(4 results)