2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J11078
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大山 剛輔 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 二次電池 / 高電圧化 / 反応高速化 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウムイオン電池は従来の二次電池と比較し、非常に高いエネルギー密度を持つ電池としてほとんどの携帯電子機器に採用されている日本発の先進デバイスである。しかし、電気自動車等への大型用途への本格的適用を鑑みると、現状の二次電池のエネルギー密度、安全性といった性能は市場の要求水準を十分に満たしているとは言いがたく、また現状の設計指針に沿った性能向上はほとんど限界に近付いている。電極、電解液など電池を構成する要素は電池特性に対して複合的に相関していることから、それぞれの側面からの抜本的指針転換による電池性能の向上が切に求められている。 以上の背景を踏まえ、電池反応の高速化、そして電池の高エネルギー化を目指し、新規正極材料と全配位型有機電解液を組み合わせた次世代型二次電池の開発を行った。まず、構成元素のすべてがレアアース元素を含まないNa-Fe(II)-S-O系において系統的な探索を初めて行い、データベース上に全く報告例のなかった新規相アルオード石型硫酸鉄ナトリウムを見出すことに成功した。新規物質の探索・合成は、セラミックス粉末を作る方法として最も一般的な固相法を用いパラメータを系統的に振ることで最適化した。 新規物質を正極、ナトリウム金属を負極としたハーフセルを用い、電池試験を行った。正極における反応式は次のようになる。 Na2Fe2(SO4)3 Na2-xFe2(SO4)3 + x Na+ + x e- (1) 一定電流で充放電試験を行った結果、(1)式から計算される理論容量の80 %以上に相当する約100 mAhg-1の可逆容量が得られた。また、充放電の平均電圧は約3.8 Vであり、既存の鉄系材料の中で最も高いことが明らかとなった。数分以内に放電が完了する非常に大きな電流を与えても容量の50 %程度が維持され、固体内におけるナトリウムイオンが高速に移動可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において精力的に研究に取り組み、筆頭著者として論文三報、共著論文一報を発表した。特に、Nature Communications誌において発表した新規電極材料は鉄系材料として最も電圧が高く、課題とする二次電池の高電圧化に資するものである。また、同誌の注目の論文に選定されるなど学術面、応用面いずれにおいても影響力の大きい成果であり、研究は概ね順調に進展していると考えている。さらに、国内外での学会やセミナー等での発表を通じ、研究成果の発信力や研究室内における後輩の指導力も着実に増している。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた新規材料の電圧が極めて高いことから、現行の電解液の酸化耐性は十分でなく、充電状態においては緩やかに電解液の分解反応が進行していることが明らかとなった。そこで、全ての溶媒が塩に対して配位することで酸化耐性が極めて高いと考えられる全配位型有機電解液を用いることで、高電位での電解液の分解を抑えられる。発見された新規材料におけるゲストイオンの拡散が高速であることから電池反応における律速段階は脱溶媒和過程であると考えられ、負極まで含めた可逆な“イオン”電池の検討とさらなる電池特性の向上を目指し、反応機構の解明と異種元素置換を用いた電極材料の制御を行う予定である。
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Research Products
(6 results)