2015 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク上のコミュニティ検出問題への物理学的アプローチ
Project/Area Number |
14J11203
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川本 達郎 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | スペクトル法 / detectability threshold / 局在固有ベクトル / ベイズ推定 / モデル選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の目的は、グラフ分割のスペクトル法についての理論的解析をすることであった。まず、グラフラプラシアンを用いたスペクトル法のパフォーマンスを、統計力学の手法(レプリカ法)を用いて解析し、Phys. Rev. E から出版された。これは主に初年度の実績である。この仕事の続編として、モジュラリティを用いたスペクトル法のパフォーマンス解析も行い、Europhys. Lett. から出版された。これは単に評価する目的関数を変えただけではなく、今まで指摘されてこなかった他の問題との関係性を示唆する論文であり、レフェリーからも高く評価された。 スペクトル法については、固有ベクトルの局在問題が有名であるが、これを回避できるとして、近年non-backtracking行列を用いた手法が注目を集めている。しかしながら、この手法を用いても局在が生じてしまう反例を発見した。これはJ. Stat. Mech. から出版された。 繰り返し二分割の解析については、その仕組みを理解するには至ったものの、理論的に興味深いものとは言いがたく、論文は執筆していない。この研究については、2015年度日本物理学会秋季大会にて発表した。 本年度の当初の目的には含まれていなかったが、共同研究(第3著者)として、ペイズ推定の枠組みによる効率の良いグラフクラスタリングアルゴリズムを提案した。この研究の論文は、現在投稿準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたスペクトル法の理論解析については、単にdetectability thresholdを計算する以上の広がりが見られた。また、局在固有ベクトルについても予定通り理論結果をひとつ与えることができた。繰り返し2分割については、予期していたような結果ではなかったが、理解を深めることはできたため、今後の重要な糧となるはずである。また、ペイズ推定の方法についても貢献できたことは、想定以上である。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目は、主にベイズ推定の枠組みについて、アルゴリズム開発と理論解析の両方を行う。ペイズ推定に基づくグラフクラスタリングの方法は、理論的には美しく、スケーラビリティも良いとされるものの、モデル選択の能力については、従来の方法では良いパフォーマンスを示さない。そこで、ベイジアンの枠組みを保ちながらも、予測誤差最小化の原理に基づくモデル選択の方法について、研究して行く。これは、情報統計力学の知見を生かすことができる方向性であり、オリジナリティの高いものになると期待できる。また、余力があれば、符号つきグラフについても、同様に研究を進めて行く予定である。
|
Research Products
(9 results)