2014 Fiscal Year Annual Research Report
結晶構造制御と人工ピニングセンターによる鉄系超伝導薄膜の特性向上と線材応用
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14J11323
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 光 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 超伝導 / 薄膜 / 超伝導線材 / 磁束ピニング / 鉄系超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来精力的に研究されてきたBa(Fe1-xCox)2As2 (BaFe2As2:Co)よりも超伝導転移温度(Tc)が10Kほど高く、高い臨界電流密度(Jc)を示すことが期待されるBaFe2(As1-xPx)2 (BaFe2As2:P)のエピタキシャル薄膜に対して、成膜条件最適化とその臨界電流特性評価を行った。パルスレーザー堆積法を用いてBaFe2As2:P薄膜の作製を試みた結果、BaFe2As2:Coよりも200度ほど成長温度が高いことが明らかになった。この高温成長の影響により、作製した薄膜表面は広範囲に原子平坦面を持ち、高い結晶性を有していた。これは今後のデバイス応用において有望であることを示している。また、基板-ターゲット間距離をコントロールして薄膜成長速度を遅くすることで、効果的にピニングセンターが導入され、鉄系超伝導薄膜では磁場中で最高のJcと小さい異方性を併せ持つ薄膜の作製に成功した。従来、超伝導体のJc特性を向上させるためには人口ピン導入や超格子構造を行うのが一般的であったが、BaFe2As2:Pにおいては、人口ピン導入や超格子構造を利用せずとも、成長条件を最適化するだけで、高い特性を示すことを明らかにした。また、透過型電子顕微鏡を用いた断面観察により、BaFe2As2:Pエピタキシャル薄膜では欠陥がピニングセンターとして働いており、高いJcや小さい異方性の起源が成長速度に依存した欠陥生成過程の変化によるものであることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
BaFe2As2:P 薄膜の成長条件を最適化する過程において、薄膜成長速度を下げることで効果的にc軸方向に線状の欠陥が生成し、鉄系超伝導薄膜において磁場中で最も高い臨界電流密度(1.1MA/cm2 @ 9T)を示すことを明らかにした。人口ピニングセンターや超格子構造を用いずに、自然に導入する欠陥を利用するだけで高い性能を示すということは、プロセスの簡略化につながり、H27年度以降実施予定のBaFe2As2:P 薄膜を用いた線材作製に有利に働く。これらの理由により、本研究計画は研究計画以上の進展があったと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
・BaFe2As2:P 薄膜を用いた線材作製と物性測定 前年度取り組んできたBaFe2As2:P薄膜の製膜条件最適化の結果を踏まえて、薄膜線材の作製にとりかかる。電子輸送特性の良い物について、薄膜中のピニングセンターの構造を観察するため、透過型電子顕微鏡による構造解析及び密度観察を行う。
・鉄カルコゲナイド系超伝導薄膜のブロック層の探索 FeSe 層の成長を妨げないPbO 構造をもつ化合物や、FeSe 系化合物が直接成長できるMgO やLaAlO3などの酸化物を検討する。場合によっては申請者が修士で立ち上げを行ったPLD/MBE 複合成膜装置を用いて、PLD 法とMBE 法の2 つを組み合わせて成長条件の確立を目指す。
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Research Products
(8 results)