2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J11350
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
芳澤 元 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 居士 / 寺社勢力 / 武家勢力 / 肖柏 / 一休宗純 / 法体装束 / 肖像画 / 還俗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公家・武家勢力の宗教実践者(在俗信徒)としての側面を重視し、その歴史的評価を試みる。今年度も東京大学史料編纂所や関係諸機関で資料調査・分析を進めた。俗人の宗教実践や出家の当否に関する中世仏教の考え方は一様ではなく、顕密系よりも新仏教系の方がやや寛容にみえるが、慎重に検証する余地がある。また俗人の道服着用については、15世紀と16世紀で若干の変化がみられる。在俗信徒の存在形態をしるうえで興味深い現象である。これらの成果の一部は以下のとおり。 (a)東京国立博物館その他が所蔵する連歌師肖柏(牡丹花)画像賛の比較分析・読解を進めた。同画像の隠者風の衣装は「居士形」を具体的に示す一例であり、肖柏が出家と「還俗」を経て「肖柏居士」と称される経緯、「居士」の存在形態を考察した(報告「遁世芸能者の居士肖像―連歌師肖柏と中世宗教」)。 (b)14世紀の未刊禅語録や関連史料を用いて、当時の仏教者の熊野参詣やその交通路を明らかにし、熊野別当家・海賊勢力と仏教の展開を関連づけて論じた(報告「鎌倉末期の熊野参詣と禅律僧」)。 (c)フランス国立極東学院(EFEO)東京支部主催シンポジウムで報告した。時代の大転換期とされる室町時代像と、戦後歴史学や評論家によって造形された一休像をめぐる時代背景を探ると同時に、当時の仏教界における民衆救済や飲酒女色の問題に対する新しい捉え方を提起し、英雄史観を排した客観的な宗教社会史の必要性を主張した。同シンポは約150名の参加者を得て活気ある討論会となった。本報告は拙稿「一休が生きた時代」の延長線上にある成果といえる(報告「一休宗純論と室町時代像」)。この過程で知見を深めた内容は、別稿「宗教勢力としての中世禅林」に発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検出数は膨大であるものの資料調査は進んでおり、新史料など今後につながる嬉しい発見もあった。またフランス国立極東学院などの企画を通して、室町仏教を論じる上でも無視できない一休宗純について考えを深める機会を得たことは僥倖であった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度も成果公表の機会は多かったが、資料調査から情報整理・執筆作業に比重を移す。資料調査も受入機関外を含めて必要な範囲で補足的に継続する。
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Research Products
(8 results)