2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J11419
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 浩介 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 星形成 / 巨大分子雲 / 大マゼラン雲 / スーパージャイアントシェル / 超新星残骸 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は大マゼラン雲のN48,N49 領域周辺の巨大なリッジ(~300 pc) に対し、Australia Telescope Compact Array (ATCA)の長基線(~1.5 km) での観測を行った。観測は2014年1月に現地ナラブライで行った後、5月と11月に遠隔操作による追観測を行っている。短い空間周波数成分を補うために、ATCAの短基線およびParkesの単一鏡のアーカイブデータとのコンバインによるイメージングを行った。データは約25” の分解能を達成しており、これまでの研究では見えていなかったようなHI ガスの細かな構造が明らかとなった。HII領域やSNRが形成する穴上の構造がはっきりと分解できており、SNRに付随する高速度成分の分布も明らかとなった。巨大なリッジが複数のHIフィラメントで構成されている様子が明らかとなっており、これまでASTE およびMopra で観測したCO 分布とのチャネルマップや位置速度図上での比較から、HIフィラメントと分子雲形成との関係を調査中である。 上記と並行して、オーストラリアのMopra望遠鏡を用いて、大マゼラン雲25天体、小マゼラン雲2天体の超新星残骸に対する網羅的なCO(1-0)輝線マッピング観測を行った。現段階での累計観測時間は300時間程度で、これまでにない高い分解能と感度により、現在の感度で27天体中17天体がCOの付随の傾向を示していることを明らかにした。また大小マゼラン雲からそれぞれ1天体に対しASTE望遠鏡を用いたCO(3-2)輝線マッピング観測も行った。X線の輝度が高くなっている領域でCO(3-2)/CO(1-0)の輝線強度比が増加していることを示し、超新星残骸周辺の分子ガスが実際に衝撃波の相互作用が起きていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の主軸に据えていた研究のうちALMAを用いた研究については、申請者のターゲットであるN48領域における観測時間が取得できなかったのに加え、共同研究者による大マゼラン雲のCycle1 における観測が大幅に後ろ倒しとなったため実行できていない。一方でもう一つの主軸である高分解能のHIガスデータを用いた研究については、上記報告の通り十分に観測を実行することができた。観測視野の中心から端にかけて急激にHIの強度が低下するリッジの構造上、イメージングにおけるサイドローブの処理が非常に困難であったが、CSIROの専門家らの助言を得て信頼に足るイメージングを完了することができた。達成した約25”の分解能は、大マゼラン雲におけるHI観測としては初めての成果である。この分解能によりシェル同士の衝突領域が複数のHIフィラメントで構成されている様子が明らかにできたことは、シェル衝突による分子雲形成を理解する上で非常に重要な成果であると考えている。
また超新星残骸周辺のCOサーベイについてもデータの取得が順調に進んでおり、ほぼ全ての天体で目標に近い感度での観測を達成できている。大小マゼラン雲における、高分解能高感度観測でのこれほどまでの大規模なCOサーベイはこれまでに行われておらず、今回明らかとなった超新星残骸周辺のCO付随の有無はアーカイブとしても非常に重要な価値を持つ成果である。これらのデータはALMA観測を行うターゲットの選定に非常に重要な役割を果たし、ALMA Cycle 3 では申請者および共同の名古屋大学を合わせ、新たに4天体の観測を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
高分解能HIの研究については、現在チャネルマップや輝線スペクトルのマルチガウシアンフィッティングによるフィラメント状HIの同定と、その物理量の導出による力学状態の詳細な調査を始めている段階である。同定したフィラメントと、ASTE およびMopra で観測したCO 分布とのチャネルマップや位置速度図上での比較から、フィラメント構造およびフィラメント同士の相互作用が分子雲形成と関連しているかどうかを明らかにする。また、E. Ntormousi博士らによる巨大膨張シェル同士の衝突の3次元シミュレーション、井上剛志博士と犬塚修一郎教授による分子雲衝突の3次元シミュレーションとの比較により、SGS同士の衝突領域におけるCO分子雲の形成・進化のシナリオを明らかにしていく予定である。
超新星残骸周辺のCOサーベイについては現在行われている追観測が終了し次第、データのアーカイブ化に向けて解析を進める。アーカイブと観測領域が被っているものについてはデータのコンバインを行い、感度の向上を計る。解析が完了したCOデータと、それぞれの超新星残骸に対する電波連続波・可視・赤外・X線のアーカイブデータとの分布比較を行い、COの付随の有無をカタログ化する。CO付随の有無と、SNRのタイプや年齢、形状、スペクトル特性の関係性を統計的に調査していく予定である。
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Research Products
(8 results)