2014 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本における「生活教育」概念形成の特質-O.ドクロリーと上沼久之丞を中心に-
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14J11459
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 優子 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | オヴィド・ドクロリー / 上沼久之丞 / 生活教育 / 新教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本における「生活教育」概念形成の特質について、ヨーロッパ的な「生」の概念との関係性に注目しながら、解明することである。とりわけ、本研究では、オヴィド・ドクロリーと上沼久之丞の教育思想に注目する。平成26年度は、以下の2点を中心的に検討した。 1.O.ドクロリーの教育思想における「全体化」概念についての検討:従来の研究において、十分に明らかにされてこなかったドクロリーの教育思想の要である「全体化」について検討するために、「全体化」概念の理論的基礎である「心的発生」研究の観点から、「全体化」の把握を試みた。19世紀末から20世紀初頭のフランス精神医学の影響下で着手された「心的発生」研究の特質に鑑みて、「全体化」概念について検討した。19世紀末から20世紀にかけての「全体性」への志向という時代潮流の中に、ドクロリーの「全体化」概念を位置付け、より検討を深めることが、現在の課題である。 2.上沼久之丞の教育思想における「実際家」概念についての検討:これまで注目されてこなかった上沼の教育思想、とりわけ「実際家」概念に注目して検討した。上沼家に所蔵されている資(史)料を駆使して、上沼の教育思想を欧米教育視察との関係から明らかにすることを試み、その成果を教育史学会で口頭発表した。従来の研究蓄積が殆どない人物を対象としたため、使用した資(史)料の多くが上沼家所蔵文書であり、上沼に関する個人史的な傾向の強い研究となった。上沼と同時代の教育(学)者の思想を比較検討することを通して、上沼の思想の特質についてより詳細に把握することが現在の課題である。 また、本年度は、上沼家所蔵文書に関する調査(於、長野県)、ドクロリーに関係する資(史)料の調査(於、スイス・フランス・ベルギー)を実施し、貴重な資(史)料の数々を入手することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、おおむね計画通り研究をすすめることができた。本年度は以下5点について検討・実施する予定であった。①ヨーロッパにおけるドクロリー研究の成果の検討、②生命科学及び社会科学領域の研究とドクロリーの教育思想の関係性についての検討、③収集済のドクロリーの論考、関連資料の読解・分析、④ヨーロッパにおける資(史)料の調査・収集、⑤ドクロリー学校の訪問、ドクロリー研究者との交流。 これら5点、すべてに着手することができたが、①、②で検討して明らかになったことを発表し、論文としての掲載を目指すという点は達成できなかった。ドクロリーの「全体化」概念として、①、②についてまとめることが現在及び今後の課題である。しかし、ドクロリーの「全体化」概念と並行して検討してきた上沼の「実際家」概念については、学会での口頭発表をすることができた。これは、平成27年度の研究計画の達成につながるものであると考える。③、④、⑤は、これからも継続的に検討・実施していく必要があるものであるが、とりわけ、④、⑤については十分な成果を得ることができたと考える。ヨーロッパでの資(史)料調査を通して、海外にも研究のネットワークを広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度における研究課題の達成度に鑑みて、平成27年度においては、以下の2点に中心的に取り組みたい。 Ⅰ 研究成果の発表 平成27年度においては、第一に、平成26年度中に達成することができなかったドクロリーの「全体化」概念にかんする論文の発表を目指す。第二に、予定通り、上沼の教育思想についてまとめたものを発表することを目指す。平成26年度に口頭発表したものを軸にして、論文としての掲載を目標にしたい。また、平成26年度に実施した資(史)料調査の成果を活かして、教育思想・教育史研究の観点から、積極的に研究成果の発表をしていきたい。 Ⅱ 博士論文の準備 予定通り、博士論文としてまとめる準備を始める。
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Research Products
(1 results)