2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原糸状菌の侵入器官の形態形成と細胞周期の制御機構に関する研究
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14J11463
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
深田 史美 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞周期 / 炭疽病菌 / 植物 / 付着器 / 植物病原糸状菌 / Colletotrichum |
Outline of Annual Research Achievements |
ウリ類炭疽病菌においてRab型GTPase活性化タンパク質(GAP)複合体を構成するCoBub2/CoBfa1はG1/S期の進行を制御し、宿主の病原性に関与する。一方で、出芽酵母における相同遺伝子BUB2、BFA1は核分裂終了機構を制御することからBub2/Bfa1は生物種によって異なる機能を持つ可能性が示唆される。平成26年度の研究において、出芽酵母BUB2およびBFA1が本菌において機能オルソログであることを検討するために、ウリ類炭疽病菌cobub2 cobfa1二重破壊株に出芽酵母BUB2、BFA1の双方を導入した。その結果、二重破壊株における細胞周期および病原性の欠損形質が相補され、これらが機能オルソログであることが判明した。また、細胞周期を制御するCoBub2/CoBfa1と宿主の病原性との関連性を評価するために、植物侵入に必須となる付着器孔における細胞骨格セプチンおよびアクチンを可視化した。その結果、破壊株でこれら細胞骨格因子の集積は顕著に低下し、さらに遺伝子破壊株接種によって植物の防御応答因子が顕著に誘導されることが見出された。さらに、出芽酵母ではBub2/Bfa1がGTPase Tem1を介して核分裂終了機構を制御することから、CoBub2/CoBfa1が制御するG1/S期進行にCoTem1が介在するかを検討した。恒常不活性型CoTEM1をcobub2破壊株およびcobfa1破壊株へ導入したところ、破壊株で認められる細胞周期および病原性の欠損形質が相補された一方で、恒常不活性型CoTEM1導入株は発芽胞子の隔壁形成率が増加した。よって本菌は出芽酵母と同様にBub2/Bfa1-Tem1のシグナルカスケードが保存されていることが判明し、一方でその機能は生物種によって特徴的な役割を果たすことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の計画に従って、ウリ類炭疽病菌CoBUB2およびCoBFA1が出芽酵母における相同遺伝子BUB2およびBFA1と機能オルソログであることを明らかにすることができた。また、CoBub2/CoBfa1は付着器孔における細胞骨格セプチンおよびアクチンの集積に関与することを明らかにし、さらに感染器官形成時における細胞周期制御の異常が植物体の防御応答を誘導するといった興味深い現象も見出した。また、Bub2/Bfa1の標的とするGTPase Tem1を同定し、各種の酵母、糸状菌との比較によりこのシグナルカスケードのもとで制御される細胞応答反応の異同を明らかにし、植物病原糸状菌の植物感染における機能的特異性を明らかにした。以上より、本研究は順調に進行していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
CoBub2/CoBfa1の細胞周期への関与をより明確化するために、Lacオペレーター/リプレッサーシステムを利用して染色体上の一部を蛍光染色することにより、遺伝子破壊株におけるG1/S期の移行時期を細胞学的に検証する。また、CoBub2/CoBfa1およびCoTem1の局在性、およびこれらの因子のG1/S期サイクリンとの関連性を検討し、CoBub2/CoBfa1-CoTem1カスケードがG1/S期進行を制御するメカニズムを明らかにしていく。さらに酵母ツーハイブリッド法を用いてCoBub2/CoBfa1-CoTem1の下流因子を網羅的に探索し、シグナルカスケードの全貌を明らかにする。
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Research Products
(5 results)