2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J11523
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
近藤 圭 東京工業大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | アントラセン / 両親媒性分子 / ナノカーボン / フラーレン / カーボンナノチューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2つのアントラセン環からなる芳香環パネルを有する独自のV型両親媒性分子を用いた疎水性分子の水溶化と、それに伴う機能創出を目指した。本年度は、V型両親媒性分子をナノカーボンの水溶化ホストとして用いることで、分子間のスタッキング相互作用により、ナノカーボンを効率的で安定な水溶化を達成した。 まず、固体状態のV型両親媒性分子とフラーレンの混合物をメノウ乳鉢によって、グラインディングし、得られ固体に水を加えると、内包されたフラーレンに由来する茶色に呈色したフラーレン複合体の水溶液が得られた。この溶液のUV-visスペクトルを測定すると、内包したフラーレン由来の吸収帯が新たに観測された。 また柔軟な集合挙動と多環芳香環パネルを有するV型両親媒性分子を用いることで、テトラセンやコロネンなどの平面状ナノカーボン類もまた、フラーレンと同様の操作で簡便に水溶化に成功し、それぞれのUV-visスペクトルでは水溶化したゲストに由来するブロードな吸収帯が明確に観測された。 一次元的に伸長した巨大な構造を有するカーボンナノチューブもまた、固体状態での混合と溶液中での超音波照射を併用することにより、効率的な水溶化を達成した。 さらに光に不安定なテトラセンやペンタセンは、V型両親媒性分子の芳香環パネルによって抱接されることで、紫外可視光に対して安定性が向上した。本研究のナノカーボン複合体の水溶液に大気下、キセノンランプを10分間照射すると、ごくわずかな光による分解(<5%)がUV-vis測定により観測された。この観測されたナノカーボンの特異的な光安定性は、多環芳香環パネルの抱接による光遮蔽および立体配置の安定化に起因すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の成果として、V型両親媒性分子によるナノカーボン類の簡便かつ安定な水溶化の達成が挙げられる。これまでに、様々なサイズや形状を有するナノカーボンを水溶化できる多様性に優れた水溶性ホストの報告例はない。本研究のV型両親媒性分子は、固体状態での混合を経ることで、種々のナノカーボンとの水溶性複合体を構築した。また、光や熱で分解するナノカーボン類では、V型両親媒性分子により抱接されることで顕著な安定化が観測された。この成果に関して、国内の学会で発表を行い、投稿論文の作成を行っている。さらに、他の疎水性分子を用いた新規な水溶性複合体の構築に取り組んでおり、進度はおおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究の水溶性ナノカーボン複合体を用いた、固体材料の構築と物性評価を目指す。また、生体分子複合型材料の構築を目指して、クロロフィルなどの光反応を誘起する生体分子をV型両親媒性分子と複合化させ、水中、新奇な光物性や光反応を開発する。さらに、本研究のV型両親媒性分子の芳香環パネルに疎水鎖を導入した新規両親媒性を構築して、芳香環と疎水鎖の相互作用を用いた、難溶性芳香族高分子の水溶化と機能創出を目指す。
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Remarks |
穐田・吉沢研究室のホームページ http://www.res.titech.ac.jp/~smart/smartj.html
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Research Products
(4 results)