2014 Fiscal Year Annual Research Report
相互効果パネルデータモデルにおける効率的な推定量の開発
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14J11635
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩倉 相雄 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | パネルモデル / 最尤法推定 / 相互効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のパネルデータ分析においては、個別効果だけでなく、時間効果や相互効果の入ったモデルが注目を集めている。しかし、既存研究では主に線形モデルが扱われており、非線形モデルの研究は、その重要性にも関わらず、あまりされていない。本研究の目的は、相互効果の入った非線形モデルにおいて効率的な推定量を開発することである。しかし、相互効果が存在する場合、個別効果や時間効果という付随母数が横断面と時系列方向に両方に存在するため、最尤法推定量の漸近展開が、個別効果だけが入ったモデルよりも複雑になり、テーラーの定理を用いた線形化の手法では漸近分布導出が困難になるという問題点がある。本研究では、線形化の手法ではなく、報告者がこれまでに得た局所漸近正規性に関する結果(Iwakura (2014))を基礎にして、最尤法推定量の漸近分布導出を目指す。 本年度は、以下の二点で進展があった。 (1)最尤法推定量を含むM-推定量の漸近分布を導出する際に有用な理論として経験過程の理論がある。報告者は、東京大学数理科学研究科の吉田朋広教授のゼミナールに参加し、経験過程の理論習得に努めた。 (2)局所漸近正規性の結果を用いて、最尤法推定量の漸近分布を導出しようとする場合、局所対数尤度比の弱収束の結果を確率場としての弱収束にまで強めなければならない。習得した経験過程の理論を利用し、局所対数尤度比の函数空間上での弱収束を示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相互効果が入った非線形モデルにおける最尤法推定量の漸近分布導出は、類型のある問題ではなく、容易ではない。本年度は、漸近分布導出のための第一ステップとして、局所対数尤度比の確率場としての弱収束を示すことができ、研究は前進していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
局所対数尤度比の漸近的挙動から、最尤法推定量の漸近分布を導出する方法としては、argmax定理の利用、あるいは、隣接性(contingency)の利用が考えられる。今後は、そういった手法の応用を徹底的にサーベイするとともに、相互効果モデルへの適用を考えていく。
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