2014 Fiscal Year Annual Research Report
結晶中の分子間相互作用の制御による新規発光性有機ボロン錯体の創成
Project/Area Number |
14J11802
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
田中 未來 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 有機ホウ素錯体 / [2.2]パラシクロファン / 分子間相互作用 / 蛍光 / 有機結晶 / 構造固定 / 励起マルチマー / 有機発光材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,二分子のジベンゾイルメタナートボロンジフロリド(1BF2)を[2.2]パラシクロファン骨格で連結した2BF2を新規に合成し,その発光特性および結晶構造を明らかにすることで,分子間相互作用が1BF2の発光特性に及ぼす影響を解明することである.本研究は,1BF2の発光特性を支配する因子を解明するだけでなく,1BF2を基とする有機発光材料の分子設計に対しても,重要な知見を与えることが期待されることから,その意義は大きい. 平成26年度は,研究実施計画に従い2BF2の合成を試みたが中間体の合成までしか達成できなかった.しかし,その比較化合物である[2.2]パラシクロファンを1BF2の片側のみに導入した3BF2を新規に合成し,シクロファンの1BF2への導入による発光特性への影響を調べることができた.その結果,溶液中では,溶媒極性により発光特性のみが大きく変化するソルバトフルオロクロミズムを示すことがわかった.密度汎関数理論計算より,これは,3BF2の励起状態が,シクロファン部を電子ドナー,それ以外を電子アクセプターとする分子内電荷移動型であるためと考察した.一方,結晶状態の3BF2は溶液中と類似した発光を示すことがわかった.これは,単結晶X線構造解析の結果より,シクロファン部のかさ高さが分子間相互作用を抑制したためと考えられる.これら3BF2の特徴的な発光特性は,以前より検討してきたアルキル基を1BF2のベンゼン環の4位に置換した誘導体では見られなかったものであり,シクロファン導入の特徴的効果であるといえる. 上記の成果は,“[2.2]パラシクロファン骨格を有するジアロイルメタナートホウ素二フッ化物の結晶構造と発光特性”というタイトルでの第41回有機典型元素化学討論会での口頭発表をはじめ,ポスター発表と合わせて合計7件の学会発表を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の研究実施計画では,平成26年度の予定は2BF2の合成および溶液中の発光特性評価であり,実際に合成を試みたが中間体の合成までしか達成できなかった.しかし,その重要な比較化合物である3BF2を新規に合成し,これを用いて[2.2]パラシクロファンの1BF2への導入による発光特性への影響を明らかにすることができた.この結果は,2BF2の発光特性を検討する上で重要な知見である. 以上の理由より,研究実施計画通りではないが,本研究を遂行する上で重要な結果が得られたことから,評価をおおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように,平成26年度の研究実施計画では,2BF2の合成,および溶液中の発光特性評価を行う予定であったが,実際には2BF2の中間体の合成,および3BF2の合成,発光特性評価を行なった.平成27年度は引き続き2BF2の合成を行い,溶液中,および結晶状態での発光特性評価を行う.これにより得られる結果と,平成26年度の研究で得た3BF2の知見を利用することで,分子の重なりに由来する分子間相互作用が1BF2の発光特性へ及ぼす影響を解明する. また,3BF2の溶液中および結晶状態の発光特性の結果について,英文報告をそれぞれ執筆中であり,平成27年度中に投稿する.
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