2015 Fiscal Year Annual Research Report
結晶中の分子間相互作用の制御による新規発光性有機ボロン錯体の創成
Project/Area Number |
14J11802
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
田中 未來 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 分子間相互作用 / 固体発光材料 / 有機ホウ素錯体 / ソルバトフルオロクロミズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,二分子の1BF2を[2.2]パラシクロファン骨格により連結した2BF2の光学特性および結晶構造を明らかにすることで,分子間相互作用が1BF2の発光特性に及ぼす影響を解明することである.本研究は,1BF2の発光特性を支配する因子の解明だけでなく,1BF2を基とする有機発光材料の分子設計に対しても,重要な知見を与えることが期待されることから,その意義は大きい. 平成27年度は,2BF2の重要な比較化合物であるシクロファン骨格を1BF2の片側のみに置換した3BF2の発光特性の詳細を検討した.平成26年度に混合溶媒中での結果を報告した,3BF2のソルバトフルオロクロミズム特性を,種々の単一溶媒中で調査した.その結果,溶媒極性の上昇に伴い,蛍光極大波長(λFL)は501 nmから576 nmへと大きく長波長シフトした.さらに,Lippert-Mataga plotにより基底状態と励起状態の双極子モーメントの大きさの差を求めたところ,18.5 Dと比較的大きい値を示した.また,c-C6H12中でのみ,485と501 nmの2つのλFLが観測された.これらの発光種を明らかにするため,c-C6H12中の蛍光スペクトルの波形分解を行ったところ,476 nmと515 nmに極大を有する2つの波形で構成されていることが示唆された.さらに,検出波長を485 nmと501 nmとして蛍光寿命の測定を行ったところ,どちらも10 ns程度とほぼ同じであることがわかった.以上より,3BF2の発光は二つの電荷移動型の励起状態からの発光であることが示唆された. これらの成果は,国内学会4件,国際学会2件の学会発表で報告した.その内,2015年 光化学討論会では英語での口頭発表賞を,第9回 有機π電子系シンポジウムではポスター発表賞をそれぞれ受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書の研究実施計画では,平成27年度の予定は2BF2の合成および溶液中の発光特性評価であり,実際に合成を試みたが中間体の合成までしか達成できなかった.しかし,その重要な比較化合物である3BF2のソルバトフルオロクロミズム特性の詳細を調査した.その結果,3BF2は基底状態と励起状態の双極子モーメントの大きさの差が,18.5 Dと比較的大きい値を示すことが明らかとなり,さらに,その発光は二つの電荷移動型の励起状態からであることが示唆された.また,3BF2の合成について,昨年度に提案したルートでは困難であることがわかったため,新たに提案したルートでの合成に既に取り組んでいる. 以上の理由より,研究実施計画通りではないが,本研究を遂行する上で重要な結果が得られたことから,評価をおおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように,研究実施計画では,2BF2の合成,および発光特性評価を行う予定であったが,実際にはその中間体の合成,および3BF2の合成,発光特性評価を行なった.昨年度に提案した合成ルートでは,3BF2の合成が困難であることがわかったため,本年度は,新たなルートで合成を試み,さらに,その物性評価を行う.これにより得られる結果と,平成27年度の研究で得た3BF2の知見を利用することで,分子の重なりに由来する分子間相互作用が1BF2の発光特性へ及ぼす影響を解明する. また,3BF2の溶液中および結晶状態の発光特性の結果について,英文報告をそれぞれ執筆中であり,平成28年度中に投稿する.
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Research Products
(8 results)