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2014 Fiscal Year Annual Research Report

銀河面リッジX線放射を構成する天体種族の解明

Research Project

Project/Area Number 14J11810
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

和田 師也  東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2014-04-25 – 2017-03-31
KeywordsX線天文学 / 白色矮星連星系
Outline of Annual Research Achievements

銀河面リッジX線放射を構成する天体種族のひとつである弱磁場白色矮星連星系(矮新星)について、すざく衛星を用いて統一的な研究を行った。CCD カメラ以上のエネルギー分解能で、複数の遷移時の矮新星のX線データを同時に扱った研究はこれが初めてである。その結果、異なる複数のフェイズでX線を放射するプラズマの構造がどう変化しているかをX線スペクトルから説明できた。また、1979年から議論されていたアウトバーストの2つのタイプについても、プラズマの広がり方の違いによって説明できることを観測から示した。
銀河面リッジX線放射を構成する種族天体のほとんどが白色矮星連星系であり、この系を詳しく調べることは重要である。超軟X線天体は白色矮星連星系のひとつであり、伴星からのガス降着率が大きいために白色矮星表面で定常的に水素核燃焼が起きている、低エネルギー側のX線帯域で明るい天体である。超軟X線天体 CAL87 のX線スペクトルは、光学的に厚い白色矮星大気からの放射と、白色矮星を取り囲む光学的に薄いコロナからの放射の2つの特徴を持つ。これまでに現象論的なモデルフィットには成功しているが、未だにこの2つの放射を統一的に説明するモデルを構築することには成功していない。そこで、モンテカルロ計算コードを用いて、2つの放射を統一的に再現するスペクトルモデルを構築した。このシミュレーションによって、異なる2つの放射を初めて半定量的に説明できた。特に、コロナの光学的厚さがこれまで考えられてきた値よりも小さいことを示唆する結果が得られたことは、今回初めて明らかになったことである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

銀河面リッジX線放射の種族天体の多くは、白色矮星連星系であると考えられている。現在までにこのうちの2種族、矮新星と超軟X線天体についての詳細な研究を行った。
矮新星については、すざく衛星による全15天体22観測の系統的なデータ解析を終えた。この研究では、矮新星のほとんどのフェイズに対して、それぞれのX線スペクトルを特徴付けることができた。これまでのCCDカメラ以上のエネルギー分解能を持つ検出器を用いた矮新星の系統的な研究は、ほとんどが静穏時のものであったため、今回の結果は銀河面リッジX線放射の合成スペクトルを作成する上で大きな足がかりとなる。この内容は国際学会で報告を行い、査読付き論文の投稿に向けての草稿を完成させた。
超軟X線天体については、CAL87 をターゲットとしてX線スペクトルシミュレーションを行った。超軟X線天体は、そのスペクトルが複雑であるため、定性的な議論しか行われてこなかった。しかし、今回モンテカルロ法を用いたシミュレーションを用いてスペクトルモデルを作成することで、初めて半定量的に物理パラメータを見積もることができた。この結果は天文学会にて報告済みであり、現在、査読付き論文として投稿するために草稿を作成中である。
また、精密軟X線分光器 SXS を搭載した ASTRO-H 衛星が 2015年度中の打ち上げを控えている。そこで、ASTRO-H 衛星の観測提案書作成に向けて、矮新星をターゲットにした SXS のスペクトルシミュレーションを行った。パリで行われた ASTRO-H 衛星のワークショップにて発表を行い、議論を交わした。

Strategy for Future Research Activity

すざく衛星で観測されている銀河面リッジX線放射の候補種族天体のうち、弱磁場白色矮星連星系および、INTEGRAL 衛星未同定天体の解析はすでに終えている。よって次に、未解析である共生星6天体とγ-Cas 類似天体2観測の解析にとりかかる。矮新星の研究によって多天体を扱う解析に習熟したので、今後の解析でこれを活かしていく。また、今回モンテカルロ法を用いたスペクトルシミュレーションを、白色矮星連星系である超軟X線天体からのX線放射に適用することができた。このシミュレーションを複数の超軟X線天体に対して行い、超軟X線天体の典型スペクトルの作成を試みる。また、この手法が他の候補種族天体に適用できるかどうか検討する。
ASTRO-H 衛星搭載の精密軟X線分光器 SXS のスペクトルシミュレーションを行ったことで、この検出器を用いてできる研究の見通しがついた。そこで、このシミュレーションをもとに観測対象天体の選択を行い、ASTRO-H 衛星の観測提案書を作成する。
前年度に行った矮新星および超軟X線天体についての研究結果は、日本天文学会の欧文研究報告誌およびヨーロッパの Astronomy & Astrophysics 誌へそれぞれ投稿予定である。前者はすでに草稿が完成しているので、近々投稿する。後者は草稿の作成段階であるが、早期の投稿を目指す。

  • Research Products

    (5 results)

All 2015 2014

All Presentation (5 results)

  • [Presentation] モンテカルロ法を用いた超軟X線天体 CAL87 のX線スペクトルシミュレーション2015

    • Author(s)
      和田師也、海老沢研、辻本匡弘、小高裕和
    • Organizer
      日本天文学会2015年春季年会
    • Place of Presentation
      大阪大学
    • Year and Date
      2015-03-18 – 2015-03-21
  • [Presentation] Suzaku XIS Calibration Status in 20142015

    • Author(s)
      和田師也、辻本匡弘、水本岬希、中島真也、堂谷忠靖、上司文善、高橋宏明、林田清、坂田美穂、尾崎俊介、森浩二、Eric D. Miller、Beverly LaMarr、他XISチーム
    • Organizer
      第15回宇宙科学シンポジウム
    • Place of Presentation
      宇宙科学研究所
    • Year and Date
      2015-01-06 – 2015-01-07
  • [Presentation] すざく衛星搭載 CCD カメラ XIS 検出器のコンタミネーションによる影響の較正2014

    • Author(s)
      和田師也、辻本匡弘、上司文善、高橋宏明、林田清、Eric D. Miller、Beverly LaMarr、他XISチーム
    • Organizer
      日本天文学会2014年秋季年会
    • Place of Presentation
      山形大学
    • Year and Date
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [Presentation] Investigation of the Boundary Layer Structure in Dwarf Nova using SXS2014

    • Author(s)
      Qazuya Wada, Masahiro Tsujimoto, Ken Ebisawa, Takayuki Hayashi
    • Organizer
      5th ASTRO-H Summer School
    • Place of Presentation
      AstroParticle Cosmology Laboratory (APC), Paris, France
    • Year and Date
      2014-07-07 – 2014-07-08
  • [Presentation] An X-ray Study of Dwarf Novae with Suzaku2014

    • Author(s)
      Qazuya Wada, Masahiro Tsujimoto, Ken Ebisawa, Takayuki Hayashi
    • Organizer
      The X-ray Universe 2014
    • Place of Presentation
      Trinity College Dublin, Ireland
    • Year and Date
      2014-06-16 – 2014-06-19

URL: 

Published: 2016-06-01  

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