2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J11810
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和田 師也 東京大学, 理学(系), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | X線天文学 / 白色矮星連星系 / 矮新星 / 超軟X線天体 / 赤外線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) モンテカルロ法を用いた超軟X線天体CAL 87 のX線スペクトルシミュレーション 銀河面リッジX線放射を構成する種族天体のほとんどが白色矮星連星系であり、この系を詳しく調べることは重要である。そこで白色矮星連星系のひとつである超軟X線天体についての研究を行った。超軟X線天体は、そのエネルギーのほとんどが ~0.5 keV 以下の超軟 X 線帯域で放射されている。伴星からの質量降着率が大きいため、白色矮星表面で定常的に水素核燃焼が起きている。昨年度はコロナモデルをもとにCAL87のX線スペクトルを構築し、XMM-Newton 衛星による実際の観測データの半定量的な再現に成功した。今年度は、同様の手法を他の超軟X線天体 U Gem, V2491 Cyg, および CAL83に適用し、そのスペクトルの再現を試みたものの、まだ完全な再現には至っていない。
(2) 近赤外線地上望遠鏡「IRSF」を用いた矮新星の時間変動の研究 矮新星は、数日間にわたって可視光で3~5等級ほどの増光を起こす、白色矮星近接連星系である。この増光はアウトバーストと呼ばれ、白色矮星周囲に形成された降着円盤の熱不安定性によって引き起こされると考えられている。アウトバースト時の詳細な振る舞いを調査するため、南アフリカ赤外線天体観測所の IRSF 望遠鏡を用いて、南天にある矮新星のひとつQR Andの1週間の赤外線三色測光を行った。簡易解析にて、この観測ではQR Andのアウトバースト時を捉えたことが確認できた。今後は、より詳細な時間解析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銀河面リッジX線放射の主要な構成種族であると考えられている白色矮星連星系の研究として、矮新星と超軟X線天体の研究を行ってきた。矮新星に関しては、X線だけではなく、極端紫外線・近赤外線での観測データも同時に扱うことで、これまでにない研究ができている。一方、超軟X線天体については、X線光子の輻射輸送計算をモンテカルロシミュレーションで行う手法を取り入れたことで、X線回折格子で観測されたデータをある程度再現できるようになった。これらをもとに、最終年度では銀河面リッジX線放射を構成する天体種族についての制限をつけていく。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、近赤外線望遠鏡で観測した矮新星のデータ解析を行う。その後、まだ完全にスペクトルを再現できていない超軟X線天体の3つの天体に対して引き続き研究おこなう。最後に、これらをもとに銀河面リッジ放射を構成する天体種族に制限を付けていく。また、データ解析と同時に、未出版であるX線で観測した矮新星の系統的な解析結果の論文化を行い、その後超軟X線天体の研究結果も学会発表及び論文化をする予定である。
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