2014 Fiscal Year Annual Research Report
苦鉄質包有岩中のジルコンを用いた、大陸下部地殻の年代および組成推定法の開発
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14J12001
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 和恵 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | ジルコン / 酸素同位体比 / 島弧下部地殻 / 丹沢トーナル岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
大陸地殻は地球表面積の約4割を占め、表層環境や固体地球の変動に深く関わるが、その形成メカニズム、地球史を通した成長量、化学組成の進化など、基本的かつ決定的な問題はいまだ未解明である。これらの問題を解く鍵である大陸下部地殻の化学組成や形成モデルは、物質の入手が困難なことから化学的な制約が不十分であった。本研究では、花崗岩やその中の苦鉄質包有岩の化学組成、さらにそこに含まれるジルコンの同位体組成から、大陸下部地殻の化学的情報を引き出し、下部地殻の形成モデルを制約することを目指した。 今年度は大陸成長の初期段階である島弧の下部地殻の形成過程に注目し、島弧下部地殻の部分溶融で形成された丹沢トーナル岩を対象に研究を行った。丹沢トーナル岩中のジルコンに対し、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を用いたU-Pb年代分析と微量元素濃度測定、および二次イオン質量分析法(SIMS)を用いた酸素同位体比測定を行ったところ、マントル中のジルコンの値よりも低い酸素同位体比が得られた。周囲の地質と丹沢トーナル岩の形成過程を考慮すると、ジルコンの酸素同位体比は、丹沢トーナル岩形成時(4-9Ma)、島弧下部地殻内にかつての海洋地殻が含まれていたことを示唆している。本研究の結果と、苦鉄質包有岩中のジルコンU-Pb年代(4-43Ma ; Suzuki et al., 2014)から復元された島弧下部地殻の年代(>43Ma)から、島弧下部地殻内にかつての海洋地殻が約40m.y.は存在していたと推定される。 本研究の成果は、変質に強く源岩の情報を反映するジルコンに対し、綿密な記載と高精度スポット分析を行うことで可能となった。本研究は海洋地殻から島弧地殻への進化の過程を、入手困難な島弧下部地殻について明らかにしたという点で、大陸成長過程の初期段階の理解へ重要な貢献を果たした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は苦鉄質包有岩中のジルコンを用いて研究を進める予定であったが、その前段階で分析を行った花崗岩中のジルコンの酸素同位体比から島弧下部地殻の化学組成の情報を得ることができた。用いる手法は予定とは異なったが、得られた結果と意義は当初の予定通りであるため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は現代形成された花崗岩である、丹沢トーナル岩で用いたジルコンの酸素同位体比分析の手法を、太古代のオーストラリアピルバラ地域に発展させる予定であった。しかし、研究を進めるうち、丹沢トーナル岩の形成過程(島弧下部地殻の部分溶融)と太古代の花崗岩の形成過程(沈み込む海洋地殻の部分溶融)が異なることから、単純な比較ができないことが浮き彫りになってきた。そのため今後は、ピルバラ地域に発展させる前段階として、太古代同様沈み込む海洋地殻の部分溶融で形成された、現代のチリタイタオ花崗岩中のジルコンの酸素同位体比および微量元素組成の測定・解析を行い、丹沢トーナル岩の結果との比較を行う。研究計画を変更し、形成過程が対照的な現代の花崗岩を用いて比較を行うことで、花崗岩形成メカニズムの理解がより着実に進むこと、本手法の太古代への応用の有用性が高まることが期待される。
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Research Products
(3 results)