2016 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世後期洋風画派と写生派との横断的研究-司馬江漢と円山応挙の関連性を中心に
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14J12039
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Research Institution | The Museum Yamato Bunkakan |
Principal Investigator |
橋本 寛子 公益財団法人大和文華館, 学芸部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 司馬江漢 / 円山応挙 / 『東山第一楼勝会図画帖』 / 絵馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、司馬江漢(1747-1818)と円山応挙(1733ー95)の制作上の影響関係を明らかにし、日本近世後期洋風画派と写生派との共通性や特異性を見い出すことである。江漢は生涯にわたり長崎や近畿方面に旅行し、道中で多くの作品を制作している。特に、天明8年(1788)から寛政元年(1789)にかけての長崎旅行を記録した『江漢西遊日記』『西遊旅譚』、また晩年の近畿旅行記『吉野紀行』からその様子がわかる。それらの記述に基づき、江漢が西日本で作成した作品や、社寺に納めた絵馬の調査を行い、その中で江漢の近畿方面での制作活動と、円山派との関連について考察を行った。 まず、寛政11年(1799)4月6日に京都で開催された書画会の作品を画帖にした『東山第一楼勝会図画帖』(大和文華館蔵)を調査した。先行研究をもとに、本画帖に書画を寄せた京都の画家たち、特に応挙没後の江漢と同時代に活動した円山派について一人ずつ事跡を辿りながら作品と資料調査を進めている。 さらに、厳島神社に所蔵される司馬江漢の絵馬《木更津浦之図》について調査を行った。江漢は生涯にわたり全国の神社仏閣に多くの絵馬を奉納したことで知られている。《木更津浦之図》は現存する江漢の絵馬の中で奉納時から同じ場所に所蔵される唯一の作例である。実際に明治時代頃まで神社の回廊に掛けられていた可能性が高く、寛政後期周辺の江漢の洋風日本風景図円熟期に相当する作例であることが確認できた。しかし、本作品が厳島神社に奉納された経緯や修復状況等詳しいことについては神社関係者に聞き取り調査を行ったが、明らかにはならなかった。今後は、さらに現存作品を調査することにより、江漢の西日本での制作活動の一端とその受容について明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象とする司馬江漢や円山派の作品についておおむね調査が進み、データを収集することができた。 また、本研究との関連として、江漢と他流派との考察をするきっかけとなった博士論文の一部に修正・加筆を行い、「北山寒巌の挿絵にみる洋風画制作の一試論―版本と書写本『新製地球万国図説』を中心に」(神戸大学美術史研究会編『美術史論集』第33号、2017年2月刊行)を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
大和文華館に所蔵される『東山第一楼勝会図画帖』(寛政 11 年 1799)の調査データをもとに、司馬江漢との関連について考察を行う。特に、同館所蔵の司馬江漢筆《海浜漁夫図》(同年)について注目する。《海浜漁夫図》は現神奈川県鎌倉市に位置する七里ケ浜の様子を描いた作品とされ、現在掛幅に表装されているが、『東山第一楼勝会図画帖』に収録されていたものである。ここに画を寄せた人物たちは『平安人物志』に登場する京都の主要な画家が多く占めている。江漢の《海浜漁夫図》と『東山第一楼勝会図画帖』の中の画家たちとの考察を行うことによって、江漢と円山派との交流関係を明らかにしたい。 今後、さらに現存作品を調査することにより、江漢の西日本での制作活動の一端とその受容について明らかにしたい。
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Research Products
(2 results)