2014 Fiscal Year Annual Research Report
思春期のいじめ被害者における援助希求行動を促進/妨害する要因の検討
Project/Area Number |
14J12170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北川 裕子 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 自殺 / いじめ / 援助希求行動 / メンタルヘルス / 思春期 / 学校 / 予防 / 疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
先進国における思春期の若者の死因の主たるものは自殺であり(WHO)、日本は先進国で唯一、自殺が若者の死因の第1位となっている(厚生労働省)。将来を担う若者が健やかに成長するため、自殺問題に対する早期支援は喫緊の課題であるといえる。 思春期における自殺の主要な要因には、精神疾患やいじめによる精神的な不調があげられる。自身の精神的な不調を周囲に訴える事は援助希求行動と呼ばれているが、思春期においてはこの援助希求行動が積極的に行われない(Gould et al., 2004)。特に、希死念慮が深刻になるほど援助希求への意思が低下すると考えられている(Wilson et al., 2010)。そのため、周囲が子どもを援助する時期を逃してしまい、結果的に思春期における自殺者数の増加を招いてしまう(Hawton et al., 2012; Rickwood 2007)。この問題を解決するためには、日本の学校教育において援助希求行動を促進する適切な教育プログラムを導入する必要があるが、それには以下の2つの問題点が存在する。1) 援助希求行動ができない生徒の特徴が不明瞭である。2)科学的に根拠のあるいじめ・自殺対策プログラムが不足している。 そこで、「思春期生徒の精神不調に対する援助希求行動を促進/妨害する要因の解明」を第一の研究目的とし、ここから得られる知見と諸外国の研究知見を基盤とした「科学的根拠のある学校教育プログラムの開発」を第二の目的として研究を進めている。 現在、1)の解決のために大規模な横断調査のデータ解析を進めるとともに、附属学校(双生児が多く在籍)における遺伝・環境要因を考慮に入れた縦断解析を進めている。2)の解決のためには、1)の結果及び諸外国の知見を取り入れつつ、日本の学校現場に馴染むいじめ・自殺対策プログラムの開発を学校教員と協働で進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的1):「どのような若者が援助希求行動をしないのか」を問題解決するため、日本の中高生約2万人を対象とした精神保健に関する横断調査の解析を行った。その結果、いじめの被害を受けている生徒で希死念慮が深刻になるほど援助希求行動が行われない傾向があることが明らかとなった。この知見は国際学術雑誌に掲載された(Kitagawa et al., 2014, PLOS ONE)。また、援助希求行動ができない精神的不調を抱えた生徒の特徴を更に探るべく、身体愁訴と希死念慮の関連を解析し、現在国際学術雑誌への投稿準備中である。この結果を国内の学術大会で報告したところ、教員向けの専門誌から「思春期の自殺問題」というテーマで執筆依頼を受け、年に3回の連載記事を執筆することとなった。今後は、さらに因果関係を含めたより詳細な解析を行うため、現在までに蓄積した中高生の縦断データの解析に着手する(ちなみに、今年度以降もデータ集積を継続する予定である)。 研究目的2):「科学的に根拠のある教育プログラムの開発」を達成するため、1)の成果及び諸外国の研究成果を取り入れつつ、日本の学校に導入・持続的に活用される教育プログラムの開発を目指し、学校教員(特に養護教諭)と月に数回の会議を開きながら協働で開発を進めている。ここで作成した授業プログラムを実際に小学校で実施し、そこでの子どもの反応や教員の感想を取り入れながら作成・修正を進めているところである。現在までに、養護教諭向けのいじめと精神保健に関する内容、いじめ対策プログラムの概要が掲載された冊子の作成、授業プログラム案の作成、啓発・普及のためのセミナーの実施、学術大会シンポジウムでの発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では特に、1)の課題解決を重点的に進めるため、思春期の生徒を対象とした精神保健調査の縦断解析に着手する。また、学校現場でよりspecificに生徒の精神不調をscreeningする方法を検討中である。具体的には、タブレット端末を活用した精神保健スクリーニングの開発に着手しているところである。目には見えずらい精神不調を抱え且つ自ら積極的に助けを求めない生徒の特徴を客観的に解明し、学校・臨床現場の教員及び医療関係者の思春期の生徒への対応に寄与することを目指す。 課題2)については、作成途中の教育プログラムをより多くの学校で実施し更にブラシュアプを行いながら、学校で実施可能な「いじめ対策および自殺予防対策プログラム」の開発に努める。また、科学的な効果を担保するために開発したプログラムの効果検証を行う予定である。
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[Journal Article] Suicidal feeling interferes with help-seeking in bullied adolescents2014
Author(s)
Yuko Kitagawa, M.A., Shinji Shimodera, M.D., Ph.D., Fumiharu Togo, Ph.D., Yuji Okazaki, M.D., Atsushi Nishida, Ph.D., Tsukasa Sasaki, M.D., Ph.D.
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: 9
Pages: e106031-e106031
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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