2014 Fiscal Year Annual Research Report
帯域分離フィルターを用いた新2SB-Mixerの開発
Project/Area Number |
14J12320
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
長谷川 豊 大阪府立大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 電波天文学 / マイクロ波帯 / 導波管回路 / 周波数フィルタ / 分波器 / サイドバンド分離 / 超伝導受信機 / Green Land Telescope |
Outline of Annual Research Achievements |
mm/submm 波帯ヘテロダイン受信機におけるイメージバンドノイズを除去するためのサイドバンド分離方式として近年実用化された ALMA 2SB-Mixer 方式では、2 つの同じ特性を持つ超伝導 SIS-Mixer をバランスさせる都合上、開発・運用が困難で特性も安定しないといった問題点があった。そこで本研究では、より開発・運用がしやすく高性能で安定したイメージバンド抑圧レベルが得られると考えられる、導波管型帯域分離フィルタを用いた新 SSB , 2SB-Mixer 方式の開発を進めた。
本年度は 100GHz 帯域における新 SSB 方式受信機を用いた大気観測装置の実用化、230GHz 帯域における新 2SB 方式受信機を用いた天文観測装置の実用化に取り組み、100GHz 受信機は名古屋大学太陽地球環境研究所の陸別観測所オゾン観測装置に、230GHz 受信機は大阪府大1.85m望遠鏡にそれぞれ搭載され、充分な成果を以ってこれらの実用化を達成できた。
これらの結果、新 SSB , 2SB-Mixer 方式は天文学会内で徐々に認知され始め、名古屋大学 NANTEN2 望遠鏡受信機・台湾中央研究院 GLT 望遠鏡受信機などで採用されるに至った。帯域分離フィルタの切削加工技術についても製作経験とそれをフィードバックした研究が進み、現在のところ X-Y 平面方向の加工誤差は~5μm、Z 方向でも10μm以下が安定して得られるようになった。また、帯域分離フィルタ自体の基礎的開発研究として、これまでに達成済みの周波数2分配器を発展させた周波数3分配器の設計・試作を進めた。次年度以降でこれの実用化にも取り組む所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画当初では本年度中に新 2SB 方式受信機の搭載と試験を行うとしていたが、これを非常に手早く実行できた結果、科学運用を1シーズン丸ごと行うことが出来、その結果に特に問題が見られないことから、充分な成果を持ってこの実用化を達成できた。
また、本研究の成果について徐々に天文学会内での認知が得られ、この結果名古屋大学 NANTEN2 望遠鏡での 109-116 GHz 新 SSB方式、 台湾中央研究院 GLT 望遠鏡での 230 GHz 帯 VLBI 用受信機への採用が決定事項となり、その開発が現在順調に進められている。よって、本研究が非常に順調な進展を見せていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、2年次には新 2SB-Mixer 方式の実用化などを進めるとしていたが、これはすでに充分に達成された。一方で本研究成果の論文化などについては未だほぼ手付かずであり、世界的にはほぼ認知を得られていない。そこで本研究の今後は、論文化などの対外発表に特に精力的に取り組む必要があると考える。また、本年度終盤に開発を始めた周波数3分配器を始めとする未達成開発項目についても順次取り組む。
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