2015 Fiscal Year Annual Research Report
胸腺プロテアソームによるT細胞の正の選択機構の解明
Project/Area Number |
14J12345
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大手 友貴 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 胸腺プロテアソーム / T細胞 / MHCクラスI |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞は自己と非自己を識別することにより、生体を様々な異物から守っている。このT細胞の自己と非自己の識別の教育は胸腺におけるT細胞の分化過程で行われる。胸腺は皮質と髄質に大別することができる。胸腺皮質上皮細胞(cTEC)では正の選択により、自己を識別可能な有用な胸腺細胞を選別し、続く胸腺髄質上皮細胞(mTEC)では負の選択により、自己を強く認識する自己反応性の胸腺細胞を排除する。これら二つの過程によりT細胞は自己と非自己の識別を確立する。cTECでは胸腺プロテアソームと呼ばれるcTECのみで発現するMHCクラスI結合ペプチド産生酵素が正の選択に必須の役割を担っている。正の選択は胸腺細胞のT細胞受容体(TCR)とcTECにより抗原提示されるペプチドとの相互作用に基づき行われると考えられており、胸腺プロテアソームが作り出すペプチドレパトアが正の選択に必須の役割を果たしていることが示唆される。このため本研究においては胸腺プロテアソームが作り出すペプチドレパトアが有するモチーフを明らかすることは最重要課題である。 これまで胸腺プロテアソームを発現するMEF作製し、これを用いて胸腺プロテアソームが作り出すペプチドレパトアの解析を徳島大学、東京都医学研究所との共同研究により進めてきた。この結果、胸腺プロテアソームが、TCRと相互作用すると想定される部位に特殊なアミノ酸を有するMHCクラスI結合ペプチドを産生することが明らかになった。またこの胸腺プロテアソームが作り出す特殊なペプチドのモチーフはMHCクラスI、ペプチド、TCRの3者の相互作用を弱めること、そしてこれがT細胞の正の選択を促進することを明らかにした。この研究成果は免疫の基本原理である自己と非自己の本質に迫るものである。これらの研究成果をまとめて共同筆頭著者としてNature Communicationsに論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
胸腺プロテアソームがその特殊な触媒活性により、TCRとの弱い親和性を有するペプチドレパトアを作り出すこと、そしてこれがT細胞の正の選択を促進することを明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
MEFを用いたMHCクラスI結合ペプチドの解析においては1x109個の細胞をサンプルとして従来型の質量分析装置を用いてMHC class I結合ペプチドとして100本程度のペプチドを同定し、そのペプチドの配列の確からしさを表すFalse positive rate(FDR)10%以下のペプチドを40本程度同定した。本課題を達成するためには最終的にマウスの胸腺よりcTECを精製し、実際にその細胞表面上のMHC class I結合ペプチドを野生型マウスとβ5t欠損マウスで比較を行うことが必須であるが、1匹のマウスよりcTECは10000個程度しか得られず、従来型の質量分析装置では解析が実現しなかった。しかし、今年度は近年飛躍的に性能が向上したorbitrap型の高感度な質量分析装置を用いた解析を用いて野生型マウスおよび胸腺プロテアソーム欠損マウスのcTEC上のMHCクラスI結合ペプチドをFDR1%以下の精度で100本程度同定することができた。現在は解析に用いるcTECの精製ステップ、MHCクラスI結合ペプチドの精製などの条件検討を行っている。この実験で実際にcTEC上のMHCクラスIに結合し、正の選択を促進していると考えられるペプチドに関しては、このペプチドを結合したMHCクラスIを発現するマウスを作製し、これがβ5t欠損マウスのCD8+T細胞の減少という表現型を回復させるか否かを確認する。
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Research Products
(2 results)