2014 Fiscal Year Annual Research Report
マウス神経管閉鎖期前後に生じるエネルギー代謝状態変化の制御機構および意義の解明
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14J12348
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮沢 英延 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | エネルギー代謝 / 発生生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
分化・増殖といった生命現象を規定する因子として、細胞のエネルギー代謝状態が近年注目されている。分化・増殖が劇的に生じる哺乳類器官形成初期において、胚のエネルギー代謝状態を厳密に制御することが正常発生に重要であると予想される。哺乳類器官形成初期のエネルギー代謝状態は古典的研究において生化学的手法を用い調べられていたものの、それらの研究は胚体外に排出される乳酸や二酸化炭素といった一部の代謝産物しか測定しておらず、胚体内のエネルギー代謝状態を正確に反映していない可能性があった。そこで本研究では、近年急速に発達した質量分析法およびイメージングの技術を用いることで、マウス器官形成初期に生じる胚のエネルギー代謝状態を詳細に記述することを目指した。メタボローム解析および安定同位体炭素でラベルしたグルコースを用いた代謝解析の結果、この時期にTCA回路のみならず解糖系の活性が胚全体のレベルで亢進することが明らかとなった。また上記のグルコース代謝の亢進に伴って解糖系経路の流路が大きく再編成される可能性も見出した。以上の点は、先行研究で示されていた胚のエネルギー代謝状態変化像の修正を促す重要な成果であり、今後の発生と代謝に関する研究の基礎となると確信している。さらに、本研究は母体糖尿病など遺伝的要因以外の要因に起因する先天奇形に対する新規治療法の開発につながる可能性があることから、医学的にも重要といえる。今後は、本研究で解明したエネルギー代謝状態変化の制御因子および生理的意義の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではこれまでに、哺乳類器官形成初期の胚においてTCA回路および解糖系の活性が胚全体のレベルで亢進すること、および解糖系経路の流路が再編成される可能性を見出すことに成功している。以上の成果は、先行研究で示されていた胚のエネルギー代謝状態変化像の修正を促すとともに、今後の発生と代謝の研究の基盤となる非常に重要な成果である。さらに、母体糖尿病といった遺伝的要因によらない先天奇形の新規治療の開発にもつながる可能性のある重要な成果であり、現在この成果に関する論文を国際科学雑誌に投稿中である。また、この時期に生じる胚のエネルギー代謝状態変化の制御因子に関していくつかの候補分子を見出すことにも成功している。以上の成果をあげたことから、本研究は当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
哺乳類器官形成初期のエネルギー代謝状態変化の制御因子に関して、本研究ではこれまでにいくつかの候補分子を見出すことに成功している。そこで今後は、培養細胞系でそれら候補分子を過剰発現・ノックダウンすることでエネルギー代謝状態変化との関連を調べる。また、この時期に生じるエネルギー代謝状態変化の生理的意義について代謝阻害剤および候補分子の遺伝子改変マウスを用いて検討する。
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Research Products
(1 results)