2015 Fiscal Year Annual Research Report
ピロリジン系天然物の全合成研究においてC(sp3)-H直接官能基化を用いる新戦略
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14J12384
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉岡 駿 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 天然物 / 全合成 / タキソール / ラジカル反応 / 第四級炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は昨年度、オキシルラジカルを利用したC(sp3)-H結合の直接変換反応を鍵とするラクタシスチンの全合成を達成した。その結果、高い反応性と官能基許容性を兼ね備えるラジカル活性種を用いる反応が、効率的な分子変換法として有用であることを実証した。そこで、本手法の一般性をさらに拡大しつつ、より複雑で有用な生物活性を有する天然物の合成研究を行うこととした。タキソールは、微小管の脱重合阻害により強力な抗腫瘍活性を示すタキサンジテルペンである。本天然物は、タキサン骨格と呼ばれる特異な6/8/6縮環骨格上に多くの酸素官能基と不斉中心を有しており、合成化学上大変興味深い。我々は、タキサンジテルペンの統一的合成経路の確立を目指し、タキソールの合成研究に着手した。合成計画としては収束的合成を志向し、分子間ラジカル付加反応による2つの6員環フラグメントの連結と続く8員環化によるタキサン骨格構築を立案した。そこで申請者は本年度、6員環フラグメント連結体の合成を行った。既知化合物であるシクロヘキセン誘導体からStilleカップリング反応による炭素鎖導入、アシルテルリド官能基の構築を経て、ラジカル前駆体を合成した。一方、既知化合物の光学活性シクロヘキセノン誘導体からアリルアルコール中間体を経由し、求電子的シアノ化による一炭素導入を経てラジカル受容体を合成した。両6員環フラグメントの分子間ラジカル付加反応による連結、カップリング成績体のトリフラート体への変換を行い、市販化合物から最長直線13工程でC8位第四級炭素を有する重要中間体の合成経路を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は本年度、タキソールの合成研究を行った。その結果、タキサン骨格構築に向けた8員環化反応の検討を十分に行える基質の合成経路を確立することに成功した。これはおおよそ期待通りの成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ラジカルカップリング成績体をケトアルデヒドへと変換し、ピナコールカップリングによる8員環化反応を検討する。続いてC環の官能基化を行い、Holtonらの合成中間体へと誘導する。これにより、効率的なタキサン骨格構築法の確立および形式全合成の達成を目指す。
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