2014 Fiscal Year Annual Research Report
飽和脂肪酸による小胞体ストレス応答分子IRE1活性化機構の解明
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14J12462
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北井 祐人 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | IRE1 / 飽和脂肪酸 / TAP / BirA |
Outline of Annual Research Achievements |
IRE1結合タンパク質について,TAP(Tandem Affinity Purification)法による同定を行った。IRE1 KO MEF細胞にSBP(Streptavidin Binding Peptide)-Flagタグを付加したIRE1の安定発現株を樹立し,TAPによる精製,銀染色後,LC-MS/MSによりIRE1結合タンパク質を同定した。その結果,複数の新規IRE1結合タンパク質が同定された。これらの分子をHeLa細胞でRNAiにより発現抑制したところ,飽和脂肪酸増加時特異的にIRE1の下流で発現上昇する遺伝子の発現上昇が有意に抑制される結果が得られた。今回同定された分子は飽和脂肪酸増加時特異的に起こるIRE1活性制御のメカニズムを説明するものである可能性がある。 IRE1近傍タンパク質について,BirAタグを用いたBioID法による探索を行った。IRE1 KO MEF細胞にBirAタグを付加したIRE1の安定発現株を樹立し,ビオチン化タンパク質を精製,銀染色によりIRE1近傍タンパク質を複数検出した。その中の一つに,異常タンパク質蓄積を起こす薬剤TunicamycinでIRE1によるビオチン化が抑制される一方で,飽和脂肪酸の添加や不飽和化酵素の発現抑制の処理ではビオチン化に変化は生じないものが存在した。この分子の同定には至っていないが,IRE1活性化シグナルの質を変化させる分子である可能性がある。 さらに,BirAタグで問題となっていたラベル時間を解消し,効率的に周辺分子をビオチン化する手法が近年開発され,APEXタグを用いたIRE1周辺分子の同定も現在進行中である。この手法により更に詳細なプロテオームが可能になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
飽和脂肪酸増加時のIRE1シグナル複合体構成分子の解明についてBioID法やTAP法によって新規IRE1結合タンパク質,近傍タンパク質が複数同定された。その中にはRNAiによりIRE1下流の遺伝子発現上昇が抑制される分子があり,飽和脂肪酸増加時のIRE1活性化に関与する可能性が示唆されている。また,周辺分子を効率的にビオチン化ラベルする最新の手法(APEX)も導入しており,複数のアプローチを行うことで刺激依存的に形成されるIRE1シグナル複合体についてさらに詳細な解析が可能になった。 これまで同定されている分子や新たな手法により同定される分子の解析を進めることにより,研究課題である飽和脂肪酸による小胞体ストレス応答分子IRE1活性化機構の解明を達成できるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
同定したIRE1結合タンパク質が飽和脂肪酸増加時のIRE1活性化に与える影響を詳細に検討する。ERストレスによるIRE1活性化には関与せず、飽和脂肪酸によるIRE1活性化のみに関与した結合タンパク質のうち、膜貫通領域を持つものについてはリン脂質センサーとしての機能を詳細に検討する。 IRE1シグナル複合体とは別にIRE1活性化に関わる翻訳後修飾として,異常タンパク質蓄積と飽和脂肪酸増加時においてIRE1のリン酸化のパターンが異なる可能性が示唆されている。刺激によるIRE1のリン酸化の違いについて検討するために,リン酸化部位の候補となる点変異体の安定発現株を網羅的に作製する。飽和脂肪酸増加時特異的なIRE1下流遺伝子の発現上昇に与える影響を調べることで,IRE1活性化の質的な違いについて分子レベルでの解析を行う。
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Research Products
(2 results)