2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J40205
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
福島 恵 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ソグド人 / 北朝隋唐史 / 墓誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ソグド人がシルクロード交易現れて以降、その交易をほぼ独占し、さらには武人として中華王朝に仕えて多大な影響を有した状況から、10世紀以降に民族と民族との間に消えていくというソグド人の活動の盛衰の諸相を墓誌史料を用いて明らかにする。2015年度の実績は以下のとおりである。 (1)墓誌の研究基盤情報の整理による墓誌史料の性格の解明 ①ソグド人の墓誌史料とはどのような史料群なのかについて、当初の計画通りソグド人墓誌を収集し、墓誌の情報のデータ化・テキスト化を行うことができた。本年度は、趙君平・趙文成編『秦晋豫新出墓誌蒐佚』(全4冊、国家図書館出版社、2011年)とその続編である趙君平・趙文成編『秦晋豫新出墓誌蒐佚続編』(全5冊、国家図書館出版社、2015年)を中心にソグド人の墓誌を収集・データ化を進めた。2016年3月時点で、北朝~北宋時代のソグド姓墓誌は昨年度より21件増加した387件で、そこから503人分の情報を得ることができ、そのうち180人はソグド人であるといえることが判明した。 2016年3月時点で、北朝~北宋時代のソグド姓墓誌 (2)ソグド人の活動動向とそれが与えた影響 以下2つのテーマで大きな収穫があった。1つ目は、景教(ネストリウス派キリスト教)徒に関して。近年洛陽で相次ぐ景教徒の史料の紹介とそこから見える問題点について、唐代史研究会夏季シンポジウムにて「唐代における景教徒墓誌―新出「花献墓誌」を中心に」と題して報告した。報告の内容は来年度(2016年)夏発行の『唐代史研究』第19号に掲載予定である。2つ目は、「唐前半期における馬の域外調達―宦官「劉元尚墓誌」を中心に」と題して報告した。宦官の劉元尚が市馬使として大食(ウマイヤ朝)や骨利幹(バイカル湖畔の鉄勒)に派遣された目的について、当時の国際情勢を中心に考察。本報告は、論文集として来年度中に出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究方法は、以下のとおりである。これまでの研究に継続して陸続と出版・報告されるソグド人墓誌の情報を収集して、既に得ているソグド人墓誌データベースに追加する((1)-①)。新たに得た墓誌とデータベースの情報を照合することでソグド人の活動について新たな見地を見出し、必要に応じて墓誌を精読して訳注を作成し、その史料としての意味を論文として発表する((2))。また、ソグド人墓誌の史料としての位置づけを明確にするため、申請者が代表を務める科研費(若手研究B:「隋唐期における墓誌史料の研究基盤情報の整理と分析」:H23-27)終了後は、陸続と出土するソグド人以外の墓誌についても各種の目録・拓本集・録文集などの情報をデータベース化し、傾向分析する((1)-②)。2015年度の到達度は以下のとおりである。 (1)-①については、前述したように、当初の計画の通りソグド人墓誌を収集し、墓誌の情報のデータベース化・テキスト化を行うことができた。以上を収集・データ化を進めることで、2016年3月時点で、北朝~北宋時代のソグド姓墓誌は昨年度より21件増加した387件で、そこから503人分の情報を得ることができ、そのうち180人はソグド人であるといえることが判明した。 (2)について、本年度は2つのテーマについて成果を発表した。1つは洛陽出土の景教徒墓誌について、もう1つは宦官「劉元尚墓誌」を中心とした馬の域外調達についてである。以上で主に取り扱った「花献墓誌」・「劉元尚墓誌」はともにソグド人のものではなかった。ただし、ソグド人と深い関わりを持つものであり、ソグド人墓誌データベースと比較・照合した成果である。ソグド人の活動が当時の国際情勢と唐代の国内情勢が複雑に絡まりながら展開していく様子の一端を明らかにすることができ、ソグド人のユーラシア東方における活動の解明にむけて一歩前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した本研究の研究方法に従って、2015年度に引き続き、2016年度は以下を実施する。 (1)-①:ソグド人墓誌の収集、墓誌の情報のデータベース化・テキスト化、ソグド人墓誌の解題の作成。 (1)-②:申請者が代表を務める科研費(若手研究B:「隋唐期における墓誌史料の研究基盤情報の整理と分析」:H23-27)が終了し、その成果を「隋唐期における墓誌史料の研究基盤情報の統計分析」(『学習院大学国際研究教育機構研究年報』2、pp.164-179)として発表した。その統計分析の成果とソグド人墓誌のデータと比較する。 (2):新たに収集したソグド人墓誌の情報をソグド人墓誌データベースと比較・照合する。新たな見地が得られた場合、その墓誌を精読して訳注を作成する。本年度は、ソグド人・突厥人の双方に共通して見られる「史姓」について考察する。これまで、史姓をもつ突厥人は限られていたが、近年陸続と報告される墓誌史料によって、その数が増えてきている。そこで、ソグド人墓誌との比較を通して、両者に差異がみられるのかについて考察したい。 また、これまでの成果をまとめた単著『ソグド人漢文墓誌の研究』の出版費用を得て刊行にこぎつけたい。
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Research Products
(4 results)