2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規光駆動ナトリウムポンプのイオン識別機構の解明と光操作技術への応用
Project/Area Number |
14J40214
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉住 玲 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 生物物理 / イオン輸送 / ロドプシン / 膜タンパク質 / 光受容 / ナトリウムポンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年に発見されたばかりで不明な点が多い、新規光駆動ナトリウムポンプの(1)イオン識別機構を明らかにすること、(2)生理的機能の解明を目的としている。 (1)分子レベルでの解析:微生物型ロドプシンは「光吸収を担う発色団がプロトン化し正電荷をもつため、プロトン以外の正電荷をポンプするのは不可能」と考えられてきた。正電荷をもつNa+を輸送する際、一番の障壁となるのは、同じく正電荷を有するレチナールシッフ塩基の存在である。光反応のスイッチでもあるこの障壁を、どのように乗り越えているのかが問題となる。 東大院理・濡木研との共同研究で明らかとなったKR2の立体構造では、KR2の対イオンAsp116の位置は、酸性と中性において対イオンAsp116の配向が異なることが明らかとなった。そこで我々は、Asp116が配向を変化することでナトリウムの輸送経路を形成するフリップモデルを提唱した。Na+の輸送に対して最大の障壁となるレチナールシッフ塩基の正電荷がなくなるとともに、Asp116の配向変化によりナトリウムイオンの経路が形成されると考えたのである。ただし注意が必要となるのは、今回明らかとなった立体構造は、光反応中間体ではなく暗状態の酸性条件における構造ということである。このモデルの正しさを示すためには、配向変化で形成されるAsp116とAsn112、Ser70の水素結合の重要性を明らかにする必要があると考えた。変異体を用いたポンプ機能解析の結果、Asp116との水素結合を保持するN112DやS70Tはナトリウムイオンを輸送した一方、N112AやS70Aでは輸送能が失われ、Asp116との水素結合が輸送に必須であることが明らかとなった。 (2)細胞レベルでの解析:KR2を有するK. eikastusの近縁種N. dokdonesis DSW-6を培養し光駆動イオン輸送活性を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)分子レベルでの解析 H27年度は、KR2のイオン輸送機構特にカチオンの輸送メカニズムについて検討し、その結果、カチオンを輸送する際には対イオンであるAsp116のフリップモデルを提唱した。 変異体を用いたポンプ機能解析の結果、Asp116との水素結合を保持するN112DやS70Tはナトリウムイオンを輸送した一方、N112AやS70Aではナトリウムイオン輸送能が失わたが、プロトン輸送能が残っていた。これはKR2のナトリウムとプロトンのイオン識別機構に重要な知見を与えるものである。 (2)細胞レベルでの解析 KR2を有するK. eikastusの近縁種N. dokdonesis DSW-6をKorean Collection for Tyep Culturesより購入、培養し、光駆動イオン輸送活性を測定した。K. eikastusと同様にナトリウムポンプNaRとプロトンポンプPRの遺伝子を保有していながら、N. dokdonesis DSW-6株は非常に強いプロトンポンプ活性を示し、ナトリウムポンプ活性は検出できなかった。そこで、培養条件を検討することでNaRの発現条件を探索したところ、NaCl濃度に依存していることが明らかとなった。これはNaRの発現が、外的要因により制御されていることを示しており、NaRの生理的機能に知見を与えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)分子レベルでの解析 Asp116の水素結合を形成するAsn112とSer70に着目し、変異体を用いたポンプ活性測定を行う。必要に応じて光反応サイクルも測定し、Asn112とSer70のイオン選択性における役割を明らかにする予定である。 (2)細胞レベルでの解析 N. dokdonesis DSW-6におけるNaRの発現制御に関する因子の探索、さらにPRの時期依存的なポンプ活性を測定する。得られた結果に対してい、それぞれに遺伝子の発現制御機構について、考察を行う。 上記について得られた結果を取りまとめ、学会発表を行う予定である。
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Research Products
(6 results)