2003 Fiscal Year Annual Research Report
多因子疾患の要因としてのインプリント遺伝子の網羅的探索
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15012215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
萩原 百合子 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70322732)
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Keywords | ゲノムインプリンティング / メチル化 |
Research Abstract |
哺乳類ゲノムにおけるDNAのメチル化は、生物学的過程に深く関わる重要な機構である。哺乳類の遺伝子の約半数は、CGI(CpG island)を持ち、正常組織中では通常メチル化を免れているとされている。例外であるインプリント部位にしばしば見出される片アレル特異的高メチル化領域DMR(differentially methylated region)は、ゲノムインプリンティングの成立もしくは維持において重要な役割を果たしていると考えられており、したがって、片アレル特異的に高メチル化されたCGIを検索することで、新規DMR及びインプリント遺伝子を同定できる可能性がある。そこで我々は、制限酵素の相反するメチル化感受性を利用したHPa^Γ-McrBC PCR法を利用し、遺伝子密度の高いヒト第11番染色体長腕(11q)をターゲットに染色体ワイドな網羅的メチル化解析を行い、メチル化の全体像の把握を試みた。結果,657個のCGIが見出され、約83%のCGIが非メチル化を示し、DMR候補となる混在型メチル化CGIは6個、うち2つのCGI(#07238933、#73839336)は、アレル非特異的なメチル化パターンを示した。これは、(1)細胞内でランダムに片方のアレルがメチル化を受けているか、(2)両アレルともメチル化を受けた細胞と、それとは反対に、両アレルともメチル化を免れている細胞が共存するためであると思われる。また、母親由来アレルが完全にメチル化を免れるのに対して、父親由来アレルが一部の細胞中ではメチル化を受けて、その領域がDMRとなっていると考えられるCGIも同定された。本解析によって同定された混在型メチル化CGIのメチル化パターンは典型的メチル化パターンとは異なり、アレル別メチル化様式は従来考えられていた以上に多様であることが示された。更に、21qと比較すると、非メチル化CGIは両染色体でほぼ等しく分布しているが、メチル化CGIの出現頻度は有意に低く、ゲノム中におけるその分布にはかなりの偏りがあるとも考えられる。このアプローチは、正常組織におけるDNAメチル化の知見を拡げる上で強力なものであると考えられる。
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