2003 Fiscal Year Annual Research Report
情報セキュリティ基盤に起因するリスクを管理するための情報経済工学的研究
Project/Area Number |
15017226
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 幹太 東京大学, 大学院・情報学環, 助教授 (00292756)
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Keywords | セキュリティマネジメント / リスク管理 / 金融派生商品 / 信用リスク / 公開鍵基盤 / 電子時刻印 / サービス妨害攻撃 / 侵入検知システム |
Research Abstract |
わかりやすい最終ディフェンスである経済工学的リスク管理によって「(当該研究領域の公募概要に掲げられている)安心して生活できる情報環境」に貢献すべく,3つのアプローチを併用した. 第一に,金融工学的基礎理論構築と産業経済学的実態調査を行い,本研究の本質的方向性に関する正当性確認を完了させた.前者では,情報セキュリティ基盤に起因する信用リスクをヘッジする金融派生商品を定義し,その価格評価理論を,離散時間モデルに対応できる設定で完成させた.後者では,セキュリティ分野における産学連携の実態が不十分なレベルであることを明らかにし,第二・第三のアプローチで完成度を高めるために必要となる課題を抽出した. 第二に,リスク定量化を推進する政策学的施策設計を行い,リスク管理の実現性に関する社会制度的基礎を整えつつある.第一のアプローチで考察した派生商品を導入可能とするためには,リスク指標の定量化が必要である.その必要性を,本特定領域研究の領域内連携を活用し,法と経済の立場から理論的に明確化した.論文発表だけでなく,施策提言と実現という手段でも社会貢献を試み,実際に経済産業省の情報セキュリティ総合戦略に盛り込まれた. 第三に,ネットワーク取引に関わる可用性確保と事後紛争解決機能のための暗号学的・工学的要素技術開発を行い,リスク管理サービスを提供するシステムの実現性に関する技術的基礎を整えつつある.具体的には,IPレベルの不正者追跡技術,秒単位まで精度を高めた電子時刻印システム,未知の分散サービス妨害攻撃を検知する技術に関して,初期的なシステム構成や基本性質を示した. 以上要するに,本研究の本質的方向性に関する正当性確認を終了するとともに,実現性に関して社会科学的基礎と工学的基礎を整えつつある.今後は是非研究を継続し,第二・第三のアプローチの完成度を高め,全体をとりまとめる必要があろう.
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Research Products
(14 results)
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[Publications] Kanta Matsuura: "Digital Security Tokens and Their Derivatives"Netnomics. Vol.5・No.2. 161-179 (2003)
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[Publications] Ken Ebato: "University-Industry Research Collaboration in the Information Security Field in Japan"Proceedings of 2003 IEEE International Engineering Management Conference (IEMC-2003). (CD-ROM). (2003)
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[Publications] Kanta Matsuura: "Information Security and Economics in Computer Networks : An Interdisciplinary Survey and a Proposal of Integrated Optimization of Investment"The 9th International Conference of Computing in Economics and Finance (CEF 2003). WWW公開. (2003)
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[Publications] Tsutomu Morigaki: "An Analysis of Detailed Electronic Time-Stamping Using Digital TV"Proceedings of 2004 IEEE International Conference on e-Technology, e-Commerce, and e-Service. (発表予定). (2004)
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[Publications] 森垣 努: "Digital TVを利用した超高精細電子時刻印システムに関する考察"コンピュータセキュリティシンポジウム(CSS)2003論文集,情報処理学会シンポジウムシリーズ. Vol.2003・No.15. 539-544 (2003)
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[Publications] 古谷隆行: "Kolmogorov Complexityに基づくサービス妨害攻撃の検知手法"第26回情報理論とその応用シンポジウム予稿集. Vol.II. 621-624 (2003)
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[Publications] 江波戸 謙: "情報セキュリティ分野における産学連携研究"2004年暗号と情報セキュリティ・シンポジウム(SCIS2004)予稿集. Vol.I. 13-18 (2004)
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[Publications] 森垣 努: "Digital TVを利用した高精細タイムスタンプシステムに関する安全性評価"2004年暗号と情報セキュリティ・シンポジウム(SCIS2004)予稿集. Vol.I. 597-602 (2004)
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[Publications] 古谷 隆行: "Kolmogorov Complexityによるサービス妨害攻撃の検知システム"2004年暗号と情報セキュリティ・シンポジウム(SCIS2004)予稿集. Vol.II. 1145-1150 (2004)
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[Publications] 細井 琢朗: "IPデータグラムが正規に変換される場合のIPトレースバック技術について"2004年暗号と情報セキュリティ・シンポジウム(SCIS2004)予稿集. Vol.II. 1369-1373 (2004)
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[Publications] 田中 秀幸: "情報セキュリティ・マネジメントの制度設計"Network Security Forum 2003. WWW公開. (2003)
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[Publications] 江波戸 謙: "情報セキュリティ分野における産学連携の状況"Network Security Forum 2003. WWW公開. (2003)
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[Publications] 古谷 隆行: "コルモ グロフ・コンプレキシティの複数の近似算出法とサービス妨害攻撃検知パフォーマンス"情報処理学会研究報告. Vol.2004,No.22. 127-132 (2004)
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[Publications] Kanta Matsuura: "Information and system security in ubiquitous networks : recent advances in management and technologies"RSA Conference 2003 Japan. (CD-ROM). (2003)