2003 Fiscal Year Annual Research Report
音声対話における感性情報伝達にかかわるヒューマンインタフェース
Project/Area Number |
15017258
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 敏枝 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00029688)
|
Keywords | 円滑なコミュニケーション / 人間関係 / 対話 / 感性情報 / 間(ま) / 協調関係 / 意図の伝達 / 同調傾向 |
Research Abstract |
われわれは日常生活における最も大きな関心事の一つは、良好な人間関係の形成であろうう。それをもたらす基礎となるのは、円滑なコミュニケーションである。コミュニケーションの機能を果たす行動はさまざまであるが、発話や対話といった、音声情報伝達の行動がまず第一に挙げられる。音声による情報伝達は感性情報の役割が大きい。その中でも特に興味深いのは「間」である。「間」は論理的には「無」であるにも拘らず、極めて豊かな感性情報を有する。話し言葉においては「間」が一番重要であると指摘するスピーチの専門家が多い。 音声認識技術や音声合成技術の進展に伴い、種々の電子メディアを介した音声対話システムが用いられるようになった。音声対話にかかわるヒューマンインタフェースの重要性は今後ますます増大すると思われる。人間の情報伝達の特性を十分に配慮し活用した対話システムを構築しなければならない。そのためには、音声情報伝達における感性情報の役割を定量的に明らかにする必要がある。本年度は、円滑なコミュニケーションを形成する「間」の役割を検討するために次の2つの側面について実験を行なった。 1.話し手の意図が的確に伝わる。 発話内容の中で特定郡分が特に「重要」であるという意図を聞き手に伝えたい時に話者が用いる方略について調べた。実験結果から、「間」を変化させることが話し手の意図の伝達に貢献し、かつ、スピーチの印象を良くすることがわかった。 2.対話相手と良好な人間関係を形成する。 対話相手と協調的な関係を保とうとする場合と、非協調的な関係を貫こうとする場合で、「間」の取り方が異なることを実証し、良好な人間関係の形成に「間」が果たす役割について検討する実験を行った。相手と良好な人間関係を保たなければならない協調条件では、発話を交替する時の「間」の長さを一致させる方向に調整しつつ対話が進むことが示唆された(同調傾向)。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 中村敏枝, Maria Draguna, 長岡千賀, 小森政嗣: "スピーチにおける「重要性」の表現と伝達に関わる感性情報"日本心理学会第67回大会発表論文集. 712 (2003)
-
[Publications] Maria Draguna, Toshie Nakamura, Chika Nagaoka, Masashi Komori: "Communication of 'Importance' in Speech - Vocal Strategies Employed in the Japanese, Romanian and English Speech"日本心理学会第67回大会発表論文集. 632 (2003)
-
[Publications] Maria Draguna, Toshie Nakamura, Chika Nagaoka, et al.: "The Influence of acoustic Factors on the Communication of 'Importance' in Speech"ヒューマンインタフェースシンポジウム'03論文集. 471-472 (2003)
-
[Publications] 長岡千賀, 小森政嗣, 中村敏枝, Maria Draguna: "対話スタイルが発話の時間パターンに及ぼす影響-意見固持型と聞き入れ型の比較-"日本心理学会第67回大会発表論文集. 631 (2003)
-
[Publications] 長岡千賀, 小森政嗣, M.Draguna, 河瀬諭, 結城牧子, 片岡智嗣, 中村敏枝: "協調的対話における音声行動の2者間の一致-意見固持型対話と聞き入れ型対話の比較-"ヒューマンインタフェースシンポジウム'03論文集. 167-170 (2003)
-
[Publications] 中村敏枝, 長岡千賀: "同調傾向(単行本「関係とコミュニケーション」の分担執筆)"社会言語科学会講座,ひつじ社(4月出版予定). (2004)