Research Abstract |
教員養成大学に所属する科学の専門家と教育工学の専門家および学生が共同して,科学者の研究成果を初等中等教育の理科教育に役立つディジタル教材として開発し,提供する仕組みを構築し,実際にWeb教材を開発した。科学者の「問いの連鎖」に注目した教材のあり方について,模倣型,目のつけどころ疑似体験型,解説・データベース型,科学者の語り型の4つのモデルを提案し,実際にWeb教材を作成して実現可能性を実証した。科学者の「問いの連鎖」を追体験できるWeb教材の開発と試行を通して,次の事柄が明らかにされた。 (1)科学者の「問いの連鎖」を追体験するための教材のモデルとして,模倣型,目のつけどころ疑似体験型,解説・データベース型,科学者の語り型を考案し,実際にそれぞれのモデルに基づいた教材を開発し,試行することにより,モデルが科学者の問いの連鎖を追体験する教材作成の方法として有効である可能性が示された。 (2)科学者,教育工学者,学生からなる教材開発チームを構成することは,教材を開発するために有効な手段であることが実証された。制作者が科学者から情報を得るとき,研究者の興味のある部分を引き出す,科学者の話した内容を自分の言葉で必ず表現して認識が正しいのかを確認する,自分がポイントだと感じたところをつっこんで聞く,具体的にポイントを絞っで聞く,理解できなければ聞きなおす,自分に教材化するだけの知識がなければ,科学者に語ってもらう,などの具体的指針を確立することができた。 (3)「問いの連鎖」を教材化した制作者の開発過程を分析し,科学者と制作者の情報交換には,9段階の開発ステップが存在することが示された。 (4)学習者が疑似体験すべき道筋を明らかにするためには,資料や,インタビューから得られた情報を,「事実」,「注目したところ」,「生まれた問い」,「仮説」,「試したこと」,「生まれた知識」の項目からなる表に整理することが有効であることが示された。
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