2003 Fiscal Year Annual Research Report
近世東アジアにおける印刷術に関する産業考古学的資料の調査研究
Project/Area Number |
15021207
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
粟野 宏 山形大学, 工学部, 助手 (20202773)
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Keywords | 印刷術 / 活版印刷 / 活字 / 器物資料 / 金属活字 / 技術史 / 産業考古学 / 木活字 |
Research Abstract |
西欧における活版印刷術がグーテンベルクにようて15世紀前半になしとげられ,そののち急速にヨーロッパ中に普及・浸透したのに対し,東アジアにおいては,その4世紀前にすでに活版印刷術が萌芽をみていたにもかかわらず,19世紀の「近代化」の時代を迎えるまで活版印刷が根づくことはなかった.活版印刷術が,その起源においても,普及・浸透においても,東西で対照的な様相を示していることは,従来書誌学や技術史の関心事であった.その技術的な要因を解明するさいに重要なことは,活字,印刷機器・用具,"製品"としての印刷物といった器物資料(産業考古学的資料)についての調査・研究である.こうした観点から,本研究では東アジアにおける活版印刷術にかかわる器物資料の所在調査および資料の分析を行う. 中国・北京および韓国・清州の印刷博物館の実地調査はいまだ行っていないが,事前調査によれば,北京の印刷博物館には,畢昇がつくったとされる陶磁製活字のレプリカや,12世紀につくられた木活字,14世紀につくられた現存する世界最古の金属活字(銅)などがある.また,清州の印刷博物館には13世紀以来の朝鮮初期の金属活字のコレクションがあると期待される. 東アジア初期の活版印刷に関する資料は,西欧の主要印刷博物館にも存在する.本補助金によらずに別途調査したところでは,ドイツ・マインツのグーテンベルク博物館には,中国の木活字や朝鮮の金属活字など初期東アジアの器物資料が収集されている.スイスのバーゼル製紙印刷博物館には,1377年に朝鮮で製作された銅活字の複製が収蔵されている. 日本では,東京都文京区の印刷博物館には,国の重要文化財に指定されている「駿河版銅活字」が収蔵されている.この銅活字については,近年,鋳造技法の解析や鋳造の再現実験など,興味深い実証的な研究が進められている.
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Research Products
(2 results)