2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国書画の印刷出版環境をめぐる諸問題の文化史的研究
Project/Area Number |
15021222
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
河内 利治 大東文化大学, 文学部・書道学科, 助教授 (70249077)
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Keywords | 書跡 / 墨跡本 / 拓本 / 法帖 / 刻本 / 真跡 / 搨模本 / 臨模本 |
Research Abstract |
現代中国および台湾では、「書法は中国文化の精華である」と認識される。書法が会得できれば、中国文化に精通できるという考え方である。中国人はなぜこのように考えるのか、その理由を考察した。 その方法論として、名筆とされる「書跡」を取り上げ、形態・造形上の比較検討と、「書論」と呼ばれる中国人の書法に対する理論上の考察を通じて、<形>と<心>の両面から追いかけた。実例として、東晋の書家、王献之筆《鴨頭丸帖》を取り上げた。《鴨頭丸帖》は「墨跡本」が上海博物館に伝来し、また石に刻して拓本に採り、冊子に仕立てた「法帖」による「刻本」も伝来する。明末に刻された《餘清齋法帖》はその代表である。この「墨跡本」と「刻本」の両者は非常に似通っており、他の刻本は一見すると同じよう見えるが、仔細に比較すると差異があることに気づく。この点は<形>が変容した証左になる。 書法の場合、「書跡」の<形>から、書いた人の<心>を、ある程度推測することは可能であろうが、凡人にはなかなか分からないと思われる。大雑把に言えば、公私の二種類の<心>になるが、<形>はどれが本物で、どの程度本来の精神面貌を得ているのか分からない場合があるだけに、判断がつきかねることが往々にして存在する。もっとも中国の「書跡」は、政治に関与した人が書いたものが多いから、公私の別の「書跡」を見ることができよう。また「文人」の書跡は「私心」の好個の例である。 「書跡」は<形>から<心>を見るしか方法が無い。しかし、同じ書跡であっても、<形>が変容する場合があるので、どの<形>から<心>を見るかが肝要である。よって普段から真跡(本物)をできる限り目にし、鑑賞し、原形・真形を脳裏に焼きつかせておかなければならない。この体験を積み、多くの<形>を把握してはじめて、書跡の<心>が見え始めるのである。
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Research Products
(1 results)