2003 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア印刷初期における中国の拓本・法帖に関する調査研究
Project/Area Number |
15021234
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
富田 淳 独立行政法人国立博物館東京国立博物館, 文化財部・列品課・列品室, 主任研究員 (20227622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綾部 稲子 台東区立書道博物館, 研究員
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Keywords | 拓本 / 法帖 / 題跋 / 中国書跡 / 美術史 |
Research Abstract |
本研究は、日本に現存する中国の拓本・法帖について、国外にある確かな資料に基づきながら、書誌学的データをも含む総合的な調査を実施し、拓本・法帖に関する基礎資料を作成しようとするものである。 本年度、海外においてはパリ国立図書館のペリオコレクションの唐拓本を調査した(温泉銘P.C.4508/化度寺塔銘断簡P.C.4510/金剛般若波羅蜜経P.C.4503)。これらの中でも、「温泉銘」には、この拓本を目睹した人物が、永徽四年(653)八月三十日の記年のある署名を書き記している。当時すでに「温泉銘」が巻子に装丁され、手習いの対象となって通行していた状況から、この拓本は建碑(648)のほぼ直後に採拓されたと考えられる、きわめて貴重な遺例である。 さらに、上海博物館主催の淳化閣帖に関する国際シンポジウムに参加し、宋拓「淳化閣帖」最善本を閲覧し、口頭発表を行った(富田「日本に現存する淳化閣帖について」・鍋島「書道博物館所蔵淳化閣帖-夾雪本-について」)。宋拓「淳化閣帖」最善本については、さまざまな議論が交わされ、論考が発表された。その代表論文は同展の図録に詳しいが、現存する最古の集帖である淳化閣帖の中でも、最旧拓に属するものとして基準としうる作例である。 国内においては、台東区立書道博物館および東京国立博物館に収蔵される拓本のうち、宋拓・旧拓として伝承される代表作について、調査・整理を進めた。紙質・墨調・装丁・題跋などの諸データを収集するとともに、デジタルカメラによる撮影を実施した。なお、本年度末から来年度にかけての「3館同時開催による名品展 拓本」(三井文庫別館・台東区立書道博物館:4月3日〜5月30日/東京国立博物館:3月30日〜6月6日)は、本研究の流れをうけて開催されるものであり、3館の出陳総数は150余点である。
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