2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ菌感染を起点とする胃癌発症機構の解析
Project/Area Number |
15023201
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
畠山 昌則 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40189551)
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ菌 / CagA / トランスジェニックマウス / 胃癌 / SHP-2 / Csk / 東アジア型CagA / 西洋型CagA |
Research Abstract |
cagA遺伝子陽性ピロリ菌感染は高度の萎縮性胃炎を惹起し、胃発癌との関連が強く示唆されている。cagA遺伝子産物であるCagAタンパク質はピロリ菌の保有するミクロの注射針様装置であるIV型分泌装置を介して菌体内から胃上皮細胞内に直接注入される。本研究では、胃上皮細胞内に侵入したCagAがSHP-2ならびにCskとの相互作用を介して撹乱・障害する細胞内シグナル伝達系の構成分子の解析を進めるとともに、動物モデル系を用いて胃上皮細胞内に発現したCagAが胃発癌を促進する機構を個体レベルで明らかにすることを目的とした。 本研究では、CagAを全身性あるいは胃粘膜上皮細胞(壁細胞)特異的に発現するトランスジェニックマウスの作成に成功した。今後、得られたcagAトランスジェニックマウスを用いて全身病変・消化管病変、特に胃における増殖性病変の有無を検討し、細胞癌化におけるCagAの役割を明らかにする。CagAにより活性化されたSHP-2の標的基質分子としてFAKを同定した。SHP-2による脱リン酸化はFAKのキナーゼ活性を抑制し、細胞接着斑(focal adhesion spot)の合成と破壊が阻止される。その結果、細胞接着能は低下し細胞運動性が亢進する。これらの変化はhummingbird細胞に特徴的な変化でもあり、CagAの生物活性発現におけるCagA-SHP-2-FAKシグナル伝達の重要性を改めて強く示唆するものである。さらに、cDNA microarrayを用いCagA依存的に活性化される転写因子を同定した。今後この転写因子活性化機構の解明ならびに細胞癌化との関連を検討する。福井県ならびに沖縄県単離ピロリ菌のゲノム解析から、東アジア型CagAと胃癌との関連が分子疫学的にも支持された。また、東アジア型CagAに認められる分子多型と生物活性との関連を明らかにした。
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Research Products
(15 results)