2003 Fiscal Year Annual Research Report
膜透過性ペプチドを付加したペプチド核酸による癌の遺伝子治療
Project/Area Number |
15025211
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 好幸 東北大学, 大学院・薬学研究科, 講師 (70333797)
|
Keywords | 遺伝子治療 / 膜透過性ペプチド / ペプチド核酸 / 癌 / アンチセンス / リボザイム / 遺伝子発現抑制 / 化学合成 |
Research Abstract |
遺伝子治療の手法には、アンチセンス法、リボザイム法、RNA干渉法など幾つかの方法が考えられる。本研究課題においては、アンチセンス法とリボザイム法の研究を行った。まず、アンチセンス法においては、本課題では、ペプチド核酸(PNA)が天然のDNAあるいはRNAと結合(hybridization)する性質を利用した、アンチセンス療法に向けた基礎研究を行った。PNAの細胞膜透過性を向上させることを目的として、膜透過性ペプチド(塩基性アミノ酸と疎水性アミノ酸からなる10残基のペプチド)を有機化学的に結合させたPNA(6種類)を合成した。本配列を用いた遺伝子発現抑制実験のモデル実験として、大腸菌を用いたアッセイを行ったが、このアッセイにおいてはPNAによる遺伝子発現抑制はみられなかった。次に本剤の物性評価を行った。一般にPNA分子は水溶性が低いことが知られている。特にアデニンあるいはグアニンといったプリン塩基を多く含む配列は水には不溶性となる。ところが、本ペプチド配列を付加したPNAは90%がプリン塩基の配列でも、超純水に1mM以上の濃度で溶解することが判った。これはペプチド配列に含まれる水溶性アミノ酸:リジン残基によりもたらされたものと考えられる。本手法は不溶性のPNA分子の水溶性向上に寄与することが解った。遺伝子治療薬として期待されるリボザイムについても研究を行った。Hammerhead Ribozymeの機能発現のメカニズム解析を行い、Ribozymeの金属イオン結合モチーフに結合した金属イオンの生理的役割がリボザイムの構造形成であることを明らかとした。本メカニズム解析の結果より、リボザイム高活性化に向けた論理的配列(構造)設計の指針が示された。これらの結果は国際的に高く評価され、J.Am.Chem.Soc.誌に掲載された。さらに関連研究の総説を寄稿する機会も得た。
|
-
[Publications] 田中好幸, 笠井康弘, 望月俊介, 脇坂昭弘, 森田勇人, 他8名: "Nature of the Chemical Bond Formed with the Structural Metal Ion at the A9/G10.1 Motif Derived from Hammerhead Ribozymes"Journal of the American Chemical Society. 126. 744-752 (2004)
-
[Publications] 田中好幸: "ハンマーヘッド型リボザイム-金属イオン相互作用の分光学的解析"薬学雑誌. 123. 305-313 (2003)
-
[Publications] 田中好幸, 笠井康弘, 森田勇人, 児嶋長次郎, 豊澤敦, 他3名: "NMR spectroscopic investigations of the roles of the metal ion at A9/G10.1 site in hammerhead ribozymes"Nucleic Acids Research Supplement. 3. 45-46 (2003)