2003 Fiscal Year Annual Research Report
多機能型非ウイルスベクターの創製:遺伝子発現促進物質と核移行促進機構の組込み
Project/Area Number |
15025267
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
河野 健司 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (90215187)
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Keywords | 遺伝子治療 / 非ウイルスベクター / リポプレックス / 膜融合 / ナノバイオ / 生体材料 / リポソーム / ナノ材料 |
Research Abstract |
これまでに酸性で膜融合性となるサクシニル化ポリグリシドール(SucPG)修飾リポソームとリポプレックスの複合体(SucPG複合体)を設計し、この複合体が既存の非ウイルスベクターと比べて優れた特長をもつことを明らかにした。トランスフェリンを結合したSucPG複合体は、標的ガン細胞表面のトランスフェリンレセプターと特異的に結合した後、エンドソームと融合することによって遺伝子を細胞質に導入し、効率のよい遺伝子発現に導く。ここでは、細胞機能を遺伝子発現に適した状態に同調させる機能をSucPG複合体に付与することや遺伝子の核への移行を促進する機能を付与することによって、さらに高い遺伝子導入活性の実現を試みた。細胞内のヌクレオソーム構造の制御にかかわるヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤であるトリコスタチンAや細胞質内のレセプターに結合して核に移行するコルチゾールを内部に含有したSucPG複合体を調製し、その遺伝子導入活性に及ぼすこれらの生理活性物質の同時導入の効果について検討した。その結果、トリコスタチンAやコルチゾールを含有したSucPG複合体と処理したHeLa細胞やHepG2細胞は、顕著に高い遺伝子発現が起こることがわかった。これらの生理活性分子は、ヌクレオソームの構造変化や細胞周期の調節、あるいは遺伝子脂質複合体の核への移行促進によって、遺伝子発現を促進しているものと考えられる。本研究で得られたこれらの研究成果串よびこれまでの研究結果を総合化することによって、(1)細胞特異的かつ、高効率な標的細胞への結合、(2)エンドソームからの効果的な脱出、(3)遺伝子の核移行の促進、(4)細胞機能の同調、の機能を併せ持つ、多機能型SucPG複合体の構築が可能であることが示された。
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[Publications] T.Takahashi et al.: "Synthesis of novel cationic lipids having polyamidoamine dendrons and their transfection activity"Bioconjugate Chemistry. 14. 764-773 (2003)
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[Publications] K.Kono, T.Takagishi: "Fusogenic polymer-modified liposomes for the delivery of genes and charged fluorophores"Methods in Enzymology. 373. 422-432 (2003)
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[Publications] 河野健司: "高効率遺伝子デリバリーを目指した機能性ベクターの設計"インテリジェント材料・システム. 12. 9-14 (2003)
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[Publications] C.Kojima et al.: "Design of biocompatible dendrimers with environment-sensitivity"Macromolecules. 36. 2183-2186 (2003)
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[Publications] 河野健司: "温度感受性高分子修飾リポソームの内包物質放出挙動"高分子加工. 52. 174-180 (2003)