2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15029207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坪井 昭夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (20163868)
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Keywords | 神経回路 / 嗅覚系 / 匂い地図 / 嗅覚受容体 / 発現制御 / 発生と再生 / 軸索ガイダンス / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
嗅覚系における初期神経回路の形成は、嗅上皮において、個々の嗅細胞が嗅覚受容体遺伝子群の中から一種類のみを発現すること(1細胞-1受容体)、並びに、嗅球において、同じ種類の嗅覚受容体を発現する嗅細胞は、特定の糸球にその軸索を収斂させて投射する(1糸球-1受容体)という二つの基本ルールによって支えられている。本研究において、嗅上皮に関して嗅覚受容体遺伝子の発現様式を詳細に解析した結果、魚類由来のクラスI遺伝子はゾーン1に限局して発現するものの、陸棲動物特有のクラスII遺伝子は、四つのゾーンのいずれか1つに限局して発現するのではなく、それぞれに固有な発現領域を持つことが明らかになった(投稿中)。即ち、嗅覚受容体遺伝子によって嗅上皮上の発現領域が異なり、背内側の領域を中心とした同心円状のひだ構造上を、連続的に且つ重なり合いながら、腹外側の領域に向かって分布していた。この嗅上皮における個々の受容体遺伝子の発現領域は、嗅細胞の嗅球上での投射先である糸球の位置を、背側から腹側の方向へ大まかに規定しているようである。それでは、嗅球における嗅細胞の投射位置の前後軸は、何によって規定されているのであろうか?本研究では更に、鳥類の視覚系において網膜・視蓋上に濃度勾配を作って投射マップの形成を支えているEph-ephrin系に着目した。Ephやephrinが嗅覚受容体分子と連携して投射位置の決定に関与している可能性を検討する為、これらのシグナル伝達系で機能する因子及びその変異体を、Cre-loxPシステムを用いて特定の嗅覚受容体MOR28と共に発現させ、その軸索投射を解析した。Eph-Asの下流で機能すると考えられているephexinのdominant-negative変異体をMOR28陽性細胞で発現させたところ、嗅球の外側部において、本来の糸球よりも後方にectopicな投射先が観察された。このことは、Eph分子が嗅細胞の投射に際して、嗅球の前後軸に沿った位置の決定に関与している可能性を示唆するものであるが、嗅覚受容体の"identity"がこの前後軸決定のプロセスにどう反映されているのかについては、今後検討される必要がある。
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Research Products
(2 results)