2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15029229
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 一郎 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 教授 (60181351)
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Keywords | 大脳皮質 / 視覚連合野 / 物体認識 / 多細胞活動同時記録 / 光学測定 / コラム構造 / 抑制性伝達物質 |
Research Abstract |
霊長類の大脳皮質視覚領野のうち、物体の視覚的認識に関わっている視覚経路は、一次視覚野から二次視覚野、四次視覚野を経由して、下側頭葉皮質(IT)にいたる側頭葉経路である。IT野に損傷が起きると、視力や空間的視覚能力は正常に保たれているにも関わらず、物体の識別ができなくなる。この領域の細胞は、複雑な図形に反応する。この反応特異性の形成メカニズムの解明は、視知覚、視覚認識の脳内メカニズムを理解する上で重要なステップである。われわれの先行研究から、この形成過程には、抑制性伝達物質であるγアミノ酪酸(GABA)を介する抑制性シナプス相互作用が重要な役割を果たすことが示されている。IT野のGABAを含む抑制性細胞と残りの興奮性細胞とを区別して、その視覚反応を解析した研は従来なされておらず、抑制性細胞が視覚刺激に反応するのか、反応するとすれが反応特異性を有するのか、反応特異性を持つとすればどのような特徴があるのかなどの基本的存性質は不明である。本研究において、複数のIT細胞から活動電位列を同時記録し、1組の細胞の間の活動電位列に対して相互相関解析法を適用することで、抑制性細胞の同定を行った。ある細胞の活動に引き続いて、同時記録した細胞の活動が一過的に減少する場合、前者は抑制性細胞と考えられる。こうして同定した抑制性細胞の性質を調べたところ、抑制細胞も興奮性細胞と同様の頻度で視覚刺激に反応し、また、反応特異性の程度に差は認められなかった。興奮性細胞はその標的細胞と同じ刺激に反応する傾向が見られるのに対して、抑制性細胞とその標的細胞は、最適刺激を共有することがたまにあっても、選択的応答性の全体プロファイルは逆相関する傾向があった。以上の結果は、抑制性のIT野細胞もまた視覚入力を受けており、自身とは異なる選択性を持つ細胞にシナプス作用をほどこし、その刺激選択性の形成に寄与していることを示唆している。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Fujita, I.: "The inferior temporal cortex : architecture, computation, and representation."Journal of Neurocytology. 31. 359-371 (2003)
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[Publications] DeFelipe, J.et al.: "Neocortical circuits : evolutionary aspects and specificity versus non-specificity of synaptic connections. Remarks, main conclusions and general comments and discussion."Journal of Neurocytology. 31. 387-416 (2003)
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[Publications] Tamura, H.et al.: "Presumed inhibitory neurons in the macaque inferior temporal cortex : visual response properties and functional interactions with adjacent neurons."Journal of Neurophysiology. (In press). (2004)
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[Publications] Tamura, H.et al.: "Inhibitory mechanisms underlying stimulus-selective responses of inferior temporal neurons."The Neural Basis of Early Vision. 11. 245-249 (2003)