2003 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質特異的遺伝子欠損システムを用いたバレル形成分子機構の研究
Project/Area Number |
15029261
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩里 琢治 独立行政法人理化学研究所, 行動遺伝学技術開発チーム, 副チームリーダー (00311332)
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Keywords | 神経科学 / マウス / 体性感覚系 / ノックアウト / 遺伝子 / Cre / loxP / 発生工学 / 可塑性 |
Research Abstract |
マウス体性感覚野のバレル形成は、活動依存的な神経回路発達のモデルとして注目されてきたが、その分子機構の理解は方法論の不備のため進んでいなかった。私達は大脳皮質特異的に目的の遺伝子を欠損させる方法の開発に成功し、バレル形成における大脳皮質機構を解明するための有力な手段を手に入れた(Iwasato et al.,2000)。本研究では、そのシステムを最大限に利用し、バレル形成機構の解明を目指している。本年度は以下のことを行った。 1、第一の課題として、私達が先に作製した大脳皮質特異的NMDAR1ノックアウト(CxNR1KO)マウスにおけるバレル形成異常をより詳細に解析した。本年度は、視床-皮質軸索の全体的なパターンと単一軸索レベルの形態を発達段階を追って解析した。その結果、CxNR1KOマウスのバレル形成には、発達段階の最初から異常が見られること、そして、その単一視床-皮質軸索は正常マウスのものと比較して、より広い範囲に投射していることが明らかとなった。 2、第二の課題として、バレル形成におけるNMDA下流分子機構を明らかにしたい。昨年度、遺伝子標的法により、候補遺伝子の必須エクソンを2個のloxPで挟んだ構造を持つfloxマウスを完成させた。本年度は、loxPの挿入自体は遺伝子の働きを阻害しないことと、loxP間のエクソンを全身で欠損させることによって、従来型ノックアウトマウスと同等となることを確認した。次いで、floxマウスをEmx1-Creマウスと交配することにより、大脳皮質特異的ノックアウトマウスを作製した。In situハイブリッダイゼーションを行い、このマウスでの遺伝子欠損の特異性を確認した。現在、バレル形成に関する組織学的解析を行っている。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Takuji Iwasato, Ryochi Nomura, Reiko Ando, Toshio Ikeda, Mika Tanaka, Shigeyoshi Itohara: "Dorsal Telencephalon-Specific Expression of Cre Recombinase in PAC Transgenic Mice"Genesis. 印刷中. (2004)
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[Publications] Yuhki, M., Yamada, M., Kawano, M., Iwasato T., Itohara, S., Yoshida, H., Ogawa, M., Mishina, Y.: "BMP Receptor Signaling is Necessary for Hair Follicle Cycling and Hair Shaft Differentiation in Mice"Development. 印刷中. (2004)
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[Publications] Inoue, H., Tsukita, K., Iwasato, T., Suzuki, Y., Tomioka, M., Tateno, M., Nagao, M., Misawa, H., Saido, T.C., Miura, M., Itohara, S., Takahashi, R.: "The crucial role of caspase in the disease progression of a transgenic ALS mouse model."EMBO J.. 22巻. 6665-6674 (2003)
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[Publications] 岩里琢治, 糸原重美: "マウス遺伝学による神経回路網精緻化の研究"生体の科学. 54巻2号. 138-145 (2003)
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[Publications] 岩里琢治: "げっ歯類バレル構造の活動依存的発達"蛋白質核酸酵素 増刊 神経回路の機能発現のメカニズム. 49巻3号. 351-357 (2004)
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[Publications] 岩里琢治(分担執筆): "運動とタンパク質・遺伝子(仮題)"有限会社ナップ(印刷中). (2004)