Research Abstract |
平成15年度は,エンドサイトーシスを担うオルガネラであるエンドソームについて,その構造的,及び機能的分化の解析をこころみた.動物細胞においては,初期エンドソーム,後期エンドソーム,リサイクリングエンドソーム等,機能的に分化した複数のエンドソームの存在が知ちれている.一方,植物細胞においては,エンドソームに機能的な分化が存在するか否かは全くわかっていなかった.我々はこれまでに,Ara6,Ara7,Rha1といったエンドサイトーシス経路で機能するRab5関連タンパク質が,植物細胞内で一部のエンドソームにのみ局在することを報告している.そこで,これらのRab GTPaseが,それぞれ異なったエンドソームに局在するのか,それとも同一のエンドソームに局在するのかを検討したところ,Ara7,Rha1は同様の細胞内局在を示すのに対し,Ara6は部分的に重複しながらも他のRab5ホモログとは異なるエンドソームの集団に局在することが明らかとなった.このことから,シロイヌナズナのエンドソームには少なくとも2種類の集団が存在することが示唆された.さらに,この2種類のエンドソーム間における機能的分化の存在が,gnom細胞を用いた実験により明らかにされた.GNOMは,エンドソームから細胞膜へとAtPinタンパク質をリサイクリングする際に機能するArfGEFで,gnom変異体の細胞中では,Ara7が局在するエンドソームが肥大し,空胞化する.これと同様のエンドソームの変形が,GFP,Rha1とGFP-AtVamp727を発現させた時にも観察された.一方,Ara6-GFPやGFP-AtPep12を発現させた際にはそのような変形エンドソームは観察されず,AtTlg2a(TGN),AtSed5(Golgi)といった他のオルガネラマーカーの局在にも変化は見られなかった.以上の結果より,植物細胞には,Ara6-richなものとAra7/Rha1-richなものの少なくとも二種類のエンドソームが存在しており,Ara7/Rha1-richエンドソームが,GNOMに依存した細胞膜へのリサイクリングを担う場所であることを明らかにできた.
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