2003 Fiscal Year Annual Research Report
原核生物における翻訳中に生じた不良タンパク質品質管理システムの分子メカニズム
Project/Area Number |
15032202
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
姫野 俵太 弘前大学, 農学生命科学部, 助教授 (80208785)
|
Keywords | tmRNA / トランストランスレーション / タンパク質分解 / SmpB / 翻訳 / リボソーム / アミノグリコシド / パロモマイシン |
Research Abstract |
トランストランスレーションは、翻訳が中断したmRNAからtmRNAへとリボソームが翻訳を切替えることで二つの分断された情報から一本のキメラペプチドを作り出す、変則的翻訳である。この反応を行うtmRNAは、tRNA様の構造を持つ部分(tRNAドメイン)とタグペプチドをコードする領域(mRNAドメイン)の二つのドメインから成る363塩基のRNAである。これまでの研究によりタグペプチドのコード領域のすぐ上流に翻訳再開のシグナルが存在することがわかってきたが、それが何によって、またどのようにして認識されることで翻訳再開位置の決定が行われるのかという命題はいまだ解決されていない。本研究では、リボソームの小サブユニットのAサイトに結合することが知られているアミノグリコシド系抗生物質のtmRNAおよびトランストランスレーションに対する影響を調べた。まず融解温度の変化の測定により、アミノグリコシド系抗生物質の一種パロモマイシンはtmRNAに2分子結合することを明らかにした。さらに化学修飾により、それぞれのパロモマイシン結合部位を特定した。2分子の結合のうちtRNAドメインへの結合はアミノアシル化に影響を与え、さらにはSmpBのtmRNAへの結合を阻害した。一方、パロモマイシンはトランストランスレーションの開始位置を-1だけシフトさせることを明らかにした。なお、アミノグリコシド系抗生物質が翻訳をシフトさせるという現象はこれまでに報告されていないものであった。そして、このシフトはパロモマイシンがtmRNAに結合することに起因するのではなく、リボソームのAサイトに結合することに起因することを、リボソームに変異を導入することで明らかにした。さらに様々なアミノグリコシドを調べた結果、トランストランスレーションのシフトを起こしうる最小構造を明らかにした。最終的に、トランストランスレーションのシフトはリボソームの小サブユニットのAサイトのrRNAの二つのアデニン塩基のフリップアウトが原因であることを結論づけた。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Takahashi, T., Konno, T., Muto, A., Himeno, H.: "Various effects of paromomycin on tmRNA-directed trans-translation."J.Biol.Chem.. 278. 27672-27680 (2003)
-
[Publications] Konno, T., Takahashi, T., Muto, A., Himeno, H.: "Various effects of paromomycin on tmRNA-mediated trans-translation."Nucleic Acids Res.Supplement. 3. 235-236 (2003)
-
[Publications] Takada, K., Hori-Takemoto, C., Kawazoe, M., Lee, S., Shirouzu, M., Yokoyama, S., Muto, A., Himeno, H.: "In vitro analysis of the initial steps of trans-translation."Nucleic Acids Res.Supplement. 3. 287-288 (2003)
-
[Publications] 姫野俵太: "タンパク質がわかる(竹縄忠臣編)"羊土社. 26-35 (2003)