2004 Fiscal Year Annual Research Report
金属酸化物単結晶・色素吸着系における電子ダイナミックス
Project/Area Number |
15033228
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
松本 吉泰 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 教授 (70181790)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 紀明 東京大学, 大学院・創成科学研究科, 助教授 (50252416)
渡邊 一也 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 助手 (30300718)
|
Keywords | フタロシアニン / 表面・界面 / 電子移動 / 電子状態緩和 / 二光子光電子分光 / 超薄膜 / 色素増感太陽電池 / チタニア |
Research Abstract |
本年度は、予定通りTiO2(110)表面の電子構造を明らかにし、この表面に蒸着した有機分子超薄膜内での電子緩和と電子移動ダイナミックスについて研究を行った。 清浄なTiO2(110)単結晶表面における電子状態について、紫外光電子分光(UPS)と2光子光電子分光(2PPE)測定を行った。UPS測定により、フェルミ基準で-1.1eVに酸素欠陥サイトに由来する占有表面状態が存在することがわかった。また、光エネルギー依存性から占有表面状態からのコヒーレント2光子過程によるものと、伝導帯に光励起された電子がさらにイオン化されたために生じる2つのピークがあることがわかった。 TiO2(110)表面に3,4,9,10-perylene tetracarboxylic dianhydride (PTCDA)薄膜を蒸着し、この超薄膜における電子状態緩和を2PPEにより明らかにした。2PPEスペクトルの中にはPTCDAの基底状態、S2状態あるいはS1状態の高い振動状態、S1状態のオリジン近くの状態に由来する3つのピークが存在する。S1のオリジン付近でもその寿命は360fsと短く、励起エネルギーの増加に応じて寿命は急速に短くなっている。このような速い電子緩和はPTCDA超薄膜のS1からの蛍光量子効率が極めて低い実験結果とよい一致を示している。 さらに、TiO2(110)表面に亜鉛フタロシアニンを蒸着し、この超薄膜における電子状態緩和、基盤への電子移動ダイナミックスを研究した。単分子層と多層膜との二つの場合について2PPE測定を行った。その結果、多層膜では第一励起一重項状態の高い振動準位に励起された分子は、分子内振動緩和によりきわめて迅速に緩和すること、および、単分子層ではこの速い分子内緩和と基盤表面への電子移動が競合することを定量的に測定することができた。
|
Research Products
(2 results)