2003 Fiscal Year Annual Research Report
結晶あるいは固体表面でフォトクロミズムを示す有機化合物の構造―機能相関
Project/Area Number |
15033256
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川東 利男 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (40038477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 芳雄 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (00221086)
磯部 敏幸 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (90037242)
小山 弘行 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (10038490)
網本 貴一 九州大学, 高等教育総合開発研究センター, 助手 (60294873)
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Keywords | フォトクロミズム / 光異性化 / 固体反応 / シッフ塩基 / サリチリデンアミン / X線結晶構造解析 / プロトン移動 |
Research Abstract |
結晶内プロトトロピー現象機構の解明を行った。 シッフ塩基類のフォトクロミズムサイクルの戻りの過程を、置換基の立体効果や重水素置換効果などを利用して詳細に調査し、光着色化学種として、トランスケト型着色種の他にシスケト型着色種が存在することを明らかにして、速報論文および総説として発表した。 同じ分子で異なる結晶構造を持つ多形現象を利用すれば、その結晶の状態を反映したフォトクロミズムの発現が期待される。4,4'-メチレンビス(N-サリチリデンアニリン)類は、2つのヒドロキシル基の相対的な位置関係の違いからシン型とアンチ型の異なる単分子構造をとることが可能であり、その構造の違いを反映した多形結晶の形成が期待される。この分子設計に基づいた合目的的な多形結晶の形成と、その結晶構造とフォトクロミズム特性の相関の2点について、詳細な検討を行った。 元素分析、^1H NMR、DSCおよびIRスペクトル、X線結晶構造解析により化合物の多形結晶の形成を確認した結果、アニリンの2,6位にメチル基を導入した化合物の単結晶では一方のサリチリデン芳香環がディスオーダーしており、等しい割合でシン、アンチの二つ構造の分子が混在していたことが分かった。イソプロピル置換基を導入した化合物では、多形結晶を単離することができ、それらの結晶の光着色化学種の熱退色過程の速度定数を測定した結果、光着色化学種の熱安定性は結晶中での反応空間の大小に影響されることが明らかになった。このように、同一の分子で結晶状態のみが異なるという多形の性質にもとづいて、フォトクロミズムの色調変化をプローブとした結晶中における分子の挙動についての考察を得ることができた。 分子間水素移動に基づくフォトクロミズム現象の研究も進めている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Kiichi Amimoto, Toshio Kawato 他: "Deuterium Isotope Effect on the Solid-State Thermal Isomerization of Photo-Colored cis-Keto Species of N-Salicylideneaniline"Chemical Communications. 870-871 (2003)
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[Publications] Hisatane Fukuda, Toshio Kawato 他: "Crystalline photochromism of N-salicylidene-2,6-dialkylanilines : advantage of 2,6-dialkyl substituents of aniline for preparation of photochromic Schiff base crystals"Organic & Biomolecular Chemistry. 1. 1578-1583 (2003)
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[Publications] Masatsugu Taneda, Toshio Kawato 他: "Photochromism of polymorphic 4,4'-methylenebis(N-salicylidene-2,6-diisopropylaniline) crystals"Organic & Biomolecular Chemistry. 2. 499-504 (2004)