2003 Fiscal Year Annual Research Report
体細胞初期化誘導および未分化状態維持に関するシグナル因子の解析
Project/Area Number |
15039206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須藤 カツ子 東京大学, 医科学研究所, 助手 (50126091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩倉 洋一郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10089120)
角田 茂 東京大学, 医科学研究所, 助手 (80345032)
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Keywords | 神経幹細部 / 多能性 / Oct-3 / 4 / Nanog / 初期胚 / 再プログラム化 / データベース / siRNA |
Research Abstract |
クローンマウスの作出成功によって、最終分化した体細胞核が未受精卵の卵細胞質に暴露されることで、再び多能性を獲得できることが証明された。一方で、組織特異的な成体幹細胞が胚性幹細胞(ES細胞)と同程度の多能性をもつことが示された。これらのことは、従来の細胞系譜の決定に関わる概念を覆す重大な研究報告である。本研究では、成体神経幹細胞をマウス初期胚内に導入することで多能性を獲得できるという報告に注目し、初期胚環境下における神経幹細胞の変化について検討した。マウス8細胞期胚と神経幹細胞とを共培養すると、幹細胞と初期胚は密に接着し、幹細胞内に未分化細胞マーカーであるOct-3/4遺伝子が発現誘導することがわかった。このよう現象は、共培養した幹細胞のうち約30%の細胞でみられた。また、他の未分化細胞のマーカー遺伝子であるNanogの発現も誘導されてくることから、成体神経幹細胞がOct-3/4およびNanogを発現する程度にまで脱分化または再プログラム化したものと考えられた。さらに、これらの神経幹細胞はマーカーであるNestin遺伝子の発現も抑制されていることがわかった。つまり、導入された神経幹細胞はより初期胚に近い状態に脱分化あるいは再プログラム化されたものと考えられた。この時、細胞接着は必須であるが、融合は起こっていないことから、脱分化および再プログラム化が細胞接着によって誘導される可能性を初めて示した。以上の結果から、データベースを用いて初期胚特異的に発現する膜上の遺伝子を抽出し、マウス受精卵へsiRNAとして注入することにより内部細胞塊の発生を阻害する因子を探索することにした。現在までに数十種類の遺伝子を同定したが、そのうち数個の遺伝子に対するsiRNAが興味深い発生阻害の表現型を示した。これらの遺伝子の中に未分化維持に関与する因子あるいは脱分化・再プログラム化に関与する因子が存在することが強く期待される。
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Research Products
(38 results)