Research Abstract |
我々は,人体の電子アトラスに基づく複数臓器の同時抽出手法について検討しているが,電子アトラスと臓器抽出手法のそれぞれについて本年度は以下の成果が得られた. まず,電子アトラスについては,人体の臓器の電子解剖データを質と量の両面から充実させた.具体的には,全臓器ラベルの輪郭をもう一度見直して必要な箇所に対して訂正を行った.次に,症例数を倍増させ,かつ,門脈(脾臓と肝臓間)や食道などを新しく追加した.また,新しく追加した臓器に対する確率アトラスや特徴量データベースの作成を行った.さらに,臓器の固有形状や臓器間の空間的な位置関係に関する統計情報データベースの開発も同時に進めた. 次に,複数臓器同時抽出手法に関する成果について以下に述べる.この処理は,腹腔領域の標準化,電子アトラスに基づく粗抽出,および,Level Set法を用いた精密抽出からなる.まず,腹腔の標準化については,自動抽出したランドマークと腹腔領域を利用して全て自動で行う手法を開発した.また,粗抽出処理については,処理の中で行っている特徴量分布のパラメータの推定法の精度の改善を行い,その改善されたパラメータを用いることで最終的な抽出精度の向上を実現した.次に,精密抽出処理については,エネルギー最小化原理に基づいて複数臓器モデル間の協調動作を行う複数Level Set法を提案した.さらに,以上の処理の性能を昨年度に比べて処理対象臓器数と評価用症例数を倍増させて評価した. その他,固有形状を用いた新しい臓器抽出アルゴリズムの提案や,臓器固有の局所特徴と臓器間の大局的位置関係モデルを利用した臓器位置推定法の提案もあわせて行った.また,本研究テーマに直結する課題以外にも,診断支援システムにおいて重要な役割を果たしている判別器の高精度化,3次元位置合わせ法の高度化なども並行して進め,それぞれ成果を挙げることができた.
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