Research Abstract |
昨年度までは臓器の階層性,隣接臓器や非臓器領域との排反性,および,内部の濃度値の一様性に注目した手法を開発したが,本年度は特に,近傍領域の特徴や臓器形状の統計的性質に注目して研究を進めた.また,症例間の臓器の位置のばらつきを抑制するための腹腔の標準化法についても改善を行った.以下では各項目について得られた成果の詳細について述べる. 1)近傍領域の特徴や臓器の固有形状の活用 注目画素に隣接する近傍領域のラベルパターンと濃度値に注目して抽出精度を向上させることに成功した.具体的には,粗抽出処理では近傍の情報を条件とする条件付確率を最大化するように手法の拡張を行った.また,精密抽出処理においては,臓器ごとに被検者固有の形状を推定し,それに基づいて高精度な抽出を行う処理を開発した.開発した手法を実際の画像に適用し,性能が従来と比べて大幅に向上することを確認した. 2)腹腔の標準化 異なる被検者間の腹腔の間には強い非線形の関係が存在することを考慮し,本年度は放射基底関数(Radial Basis Function)を用いた非線形変形手法を開発した.この手法は,画像中に任意に配置したランドマークの組を一致させるように画像を非線形に変形することが可能である.解剖学的な根拠に基づいて配置したランドマークを用いることで,異なる被検者間の腹腔の一致度を大きく向上させることに成功し,後段の臓器抽出処理にも優れた効果を示すことを確認した. なお,本年は最終年度であるため,これまでの全ての成果をまとめて一つの多臓器同時抽出法を完成させた.また,多臓器・多疾病診断支援用のデモシステムに結果を統合した.
|